Keywords: Wilson の定理, ウィルソンの定理
$p$ を素数とするとき, 合同式 $$ (p-1)! \equiv -1\pmod{p} $$ が成り立つことを証明せよ.
解答例 1
$p=2$ のとき, $(p-1)!+1=2$ であるから, 与えられた合同式は成り立つ.
$p$ が奇素数のとき, $1\leq a\leq p-1$ である各整数 $a$ に対して, ある整数 $a'$ が一意的に存在して, $$ aa'\equiv 1\pmod{p},\quad 1\leq a'\leq p-1. $$ このとき, $a=a'$ となるのは, $a=1$ または $a=p-1$ の場合である. 実際, \begin{align*} a=a' &\Longrightarrow a^{2}\equiv 1\!\!\!\pmod{p} \\ &\Longrightarrow (a-1)(a+1)\equiv 0\!\!\!\pmod{p} \\ &\Longrightarrow \mbox{$a-1\equiv 0\!\!\!\pmod{p}$ または $a+1\equiv 0\!\!\!\pmod{p}$} \\ &\Longrightarrow \mbox{$a=1$ または $a=p-1$}. \end{align*} 残りの $p-3$ 個の $2$, $3$, $\ldots$, $p-2$ は, $aa'\equiv 1\pmod{p}$ を満たす $(p-3)/2$ 個の対 $a$, $a'$ に分けられる. ゆえに, $$ 2\cdot 3\cdot \cdots \cdot (p-2)\equiv 1\pmod{p}. $$ したがって, \begin{align*} (p-1)! &\equiv 1\cdot 2\cdot 3\cdot \cdots \cdot (p-2)\cdot (p-1) \\ &\equiv p-1\equiv -1\pmod{p}. \end{align*}
解答例 2
$\mathbb{F}_{p}$ を $p$ 個の元からなる有限体とし, $\mathbb{F}_{p}[X]$ を $\mathbb{F}_{p}$ 上の $1$ 変数多項式環とする. 初等整数論における Fermat の定理によれば, 任意の整数 $a$ に対して, $$ \gcd(a, p)=1\Longrightarrow a^{p-1}\equiv 1\!\!\!\pmod{p} $$ が成り立つ. このことから, $\mathbb{F}_{p}[X]$ において, 多項式 $X^{p-1}-1$ は $1$, $2$, $\ldots$, $p-1$ を根にもつ. よって, $$ X^{p-1}-1 = (X-1)(X-2)\cdots (X-(p-1)) $$ と因数分解できる. $X=0$ を代入すれば, $\mathbb{F}_{p}$ において, $$ -1 = (-1)^{p-1}(p-1)! = (p-1)!. $$ ここで, この等式は, $p$ が $2$ の場合でも奇素数の場合でも成り立つ. したがって, $(p-1)! \equiv -1\pmod{p}$.
最終更新日:2011年11月02日