環上の加群の定義を述べよ.
解答例 1
$R$ を環, $M$ を加法群とし, 写像 $\rho: R\times M\rightarrow M$ が定義されているものとする. 各 $x\in M$, $a\in R$に対して, $\rho(a, x)$ を $ax$ と書くことにする.
以下の条件が成り立つとき, $M$ を左 $R$ 加群あるいは $R$ 上の左加群という. またそのとき, $\rho$ を $M$ におけるスカラー倍, $R$ の元をスカラーといい, 各 $x\in M$, $a\in R$に対して, $ax$ を $x$ の $a$ 倍という.
(i) 任意の $x$, $y\in M$, $a\in R$ に対して, $$ a(x+y) = ax + ay. $$
(ii) 任意の $x\in M$, $a$, $b\in R$ に対して, $$ (a+b)x = ax + bx. $$
(iii) 任意の $x\in M$, $a$, $b\in R$ に対して, $$ (ab)x = a(bx). $$
(iv) $1$ を $R$ の単位元とするとき, 任意の $x\in M$ に対して, $$ 1x = x. $$
$R$ を環, $M$ を加法群とし, 写像 $\rho': R\times M\rightarrow M$ が定義されているものとする. 各 $x\in M$, $a\in R$に対して, $\rho'(a, x)$ を $xa$ と書くことにする.
以下の条件が成り立つとき, $M$ を右 $R$ 加群あるいは $R$ 上の右加群という. またそのとき, $\rho'$ を $M$ におけるスカラー倍, $R$ の元をスカラーといい, 各 $x\in M$, $a\in R$に対して, $xa$ を $x$ の $a$ 倍という.
(i$'$) 任意の $x$, $y\in M$, $a\in R$ に対して, $$ (x+y)a = xa + ya. $$
(ii$'$) 任意の $x\in M$, $a$, $b\in R$ に対して, $$ x(a+b) = xa + xb. $$
(iii$'$) 任意の $x\in M$, $a$, $b\in R$ に対して, $$ x(ab) = (xa)b. $$
(iv$'$) $1$ を $R$ の単位元とするとき, 任意の $x\in M$ に対して, $$ x1 = x. $$
$R$ が可換環のとき, 左 $R$ 加群と右 $R$ 加群とは, 記法の違いを除いて実質的には同じものなので, それらを単に $R$ 加群あるいは $R$ 上の加群という.
特に, 体上の加群のことをベクトル空間という.
$R$, $R'$ を環とし, $M$ を加法群とする. $M$ が左 $R$ 加群かつ右 $R'$ 加群であって, 任意の $x\in M$, $a\in R$, $a'\in R'$ に対して $$ (ax)a' = a(xa') $$ が成り立つとき, $M$ を $(R, R')$-両側加群という.
最終更新日:2011年11月02日