$R$, $R'$ を環, $f:R\rightarrow R'$ を環の準同型写像, $J_{1}$, $J_{2}$ を $R'$ の左イデアルとする. このとき, $$ f^{-1}(J_{1}) + f^{-1}(J_{2}) \subseteq f^{-1}(J_{1}+J_{2}) $$ が成り立つ. さらに, $f$ が全射ならば, 等号が成り立つ. このことを証明せよ.
解答例 1
$f$ は環の準同型写像だから, $f^{-1}(J_{1})$, $f^{-1}(J_{2})$, $f^{-1}(J_{1}+J_{2})$ は $R$ の左イデアルである. \begin{align*} J_{1}, J_{2}\subseteq J_{1}+J_{2} & \Longrightarrow f^{-1}(J_{1}), f^{-1}(J_{2})\subseteq f^{-1}(J_{1}+J_{2}) \\ & \Longrightarrow f^{-1}(J_{1}) + f^{-1}(J_{2})\subseteq f^{-1}(J_{1}+J_{2}). \end{align*}
さらに, $f$ は全射であると仮定する. $x\in f^{-1}(J_{1}+J_{2})$ とする. $f(x)\in J_{1}+J_{2}$ であるから, $$ f(x) = y_{1} + y_{2},\quad y_{1}\in J_{1},\quad y_{2}\in J_{2} $$ と表せる. $f$ は全射であるから, ある $x_{1}$, $x_{2}\in R$ が存在して, $y_{1}=f(x_{1})$, $y_{2}=f(x_{2})$. よって, $$ f(x) = f(x_{1}) + f(x_{2}). $$ $f$ が準同型写像であることから, $$ f(x-x_{1}-x_{2}) = 0. $$ ゆえに, $$ x-x_{1}-x_{2}\in\ker{f}=f^{-1}(0)\subseteq f^{-1}(J_{1}). $$ このとき, $$ x-x_{2} = x_{1} + (x-x_{1}-x_{2}) \in f^{-1}(J_{1}). $$ よって, $$ x = (x-x_{2}) + x_{2} \in f^{-1}(J_{1}) + f^{-1}(J_{2}). $$ したがって, $f^{-1}(J_{1}+J_{2})\subseteq f^{-1}(J_{1}) + f^{-1}(J_{2})$ となり, 逆の包含関係もいえる.
最終更新日:2011年11月02日