$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

$R$ を整域, $R[X, Y]$ を $R$ 上の $2$ 変数多項式環とする. このとき, $X$, $Y$ で生成される $R[X, Y]$ のイデアル $$ (X, Y) = X\cdot R[X, Y] + Y\cdot R[X, Y] $$ は単項イデアルではないことを証明せよ.

解答例 1

背理法により証明する. $(X, Y)$ が単項イデアルであると仮定して矛盾を導く. なお, $R$ が整域ならば $R[X, Y]$ もまた整域であることや, 整域上の多項式の次数についての性質は断りなしに利用する.

背理法の仮定より, ある $f(X, Y)\in R[X, Y]$ が存在して, $$ (X, Y) = f(X, Y)\cdot R[X, Y] $$ である. $f(X, Y)\in (X, Y)$ であるから, $f(0, 0)=0$. もし仮に $f(X, Y)$ が定数だとすると, $f(X, Y)=0$ となるから, $(X, Y)=\{0\}$. これは $X\in (X, Y)$ に矛盾する. ゆえに, $f(X, Y)$ は定数ではない. すなわち, \begin{equation} \deg{f}\geq 1. \tag{1} \end{equation} さて, $X$, $Y\in (X, Y)$ であるから, \begin{align} X &= f(X, Y)g(X, Y),\quad g(X, Y)\in R[X, Y], \tag{2} \\ Y &= f(X, Y)h(X, Y),\quad h(X, Y)\in R[X, Y] \tag{3} \end{align} と表される. $X\neq 0$, $Y\neq 0$ より $g(X, Y)\neq 0$, $h(X, Y)\neq 0$ であるから, \begin{equation} \deg{g}\geq 0,\quad \deg{h}\geq 0. \tag{4} \end{equation} また, (2), (3) より, \begin{align*} 1 &= \deg{X} = \deg{f} + \deg{g}, \\ 1 &= \deg{Y} = \deg{f} + \deg{h}. \end{align*} これと (1), (4) より, $$ \deg{f} = 1,\quad \deg{g}=\deg{h} = 0. $$ すなわち, $f(X, Y)$ は $1$ 次式, $g(X, Y)$, $h(X, Y)$ はともに $0$ でない定数である. そこで, \begin{align*} f(X, Y) &= a_{1}X + a_{2}Y\quad (a_{1}, a_{2}\in R), \\ g(X, Y) &= b,\quad h(X, Y) = c \end{align*} とおく. すると, (2), (3) より, \begin{align*} X &= (a_{1}X + a_{2}Y)b, \\ Y &= (a_{1}X + a_{2}Y)c. \end{align*} $X$ の係数を比較すると, $$ a_{1}b = 1,\quad a_{1}c = 0. $$ 1番目の式と $b\neq 0$ より, $a_{1}\neq 0$. ところが, 2番目の式と $c\neq 0$ より, $a_{1}=0$. これは矛盾である.

最終更新日:2011年11月02日

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