$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

斜体上の全行列環は単純環であることを証明せよ.

解答例 1

$K$ を斜体, $M_n(K)$ を $K$ 上の $n$ 次全行列環とする. $E$ を $M_n(K)$ の単位元とする. すなわち, $E$ は $n$ 次単位行列である. また, 各 $i$, $j$ に対して, $E_{ij}$ を行列単位とする. すなわち, $E_{ij}$ は $(i, j)$-成分が 1 で他の成分がすべて 0 であるような $M_{n}(K)$ の元である.

$\mathfrak{J}$ を零イデアルでない $M_{n}(K)$ の両側イデアルとする. そのとき, ある $A\in M_{n}(K)$ が存在して, $A\in\mathfrak{J}$ かつ $A\neq O$ である. $A=[a_{ij}]$ とおくと, ある $i$, $j$ が存在して, $a_{ij}\neq 0$ である. $K$ は斜体だから, $a_{ij}$ の逆元 $a_{ij}^{-1}$ が存在する. 各 $k$, $l$ に対して, $$ E_{ki}AE_{jl} = a_{ij}E_{kl} $$ であるから, $$ E_{kl} = a_{ij}^{-1}E_{ki}AE_{jl}\in\mathfrak{J}. $$ よって, $$ E = \sum_{k=1}^{n}E_{kk} \in \mathfrak{J}. $$ ゆえに, $\mathfrak{J}=M_{n}(K)$ となる. したがって, $M_{n}(K)$ の両側イデアルは零イデアルと $M_{n}(K)$ 自身しかない.

最終更新日:2011年11月02日

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