計量ベクトル空間の定義を述べよ.
解答例 1
$K=\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$ とし, $V$ を $K$ 上のベクトル空間とする.
写像 $h:V\times V\rightarrow K$ が, $V$ 上の内積あるいは正値 Hermite 形式であるとは, 次の条件が満たされるときにいう.
(i) 任意の $x$, $x'$, $y\in V$ に対して, $$ h(x+x', y) = h(x, y) + h(x', y). $$
(ii) 任意の $x$, $y$, $y'\in V$ に対して, $$ h(x, y+y') = h(x, y) + h(x, y'). $$
(iii) 任意の $x$, $y\in V$, $a\in K$ に対して, \begin{align*} h(ax, y) &= ah(x, y), \\ h(x, ay) &= \overline{a}h(x, y). \end{align*}
(iv) 任意の $x$, $y\in V$ に対して, $$ h(y, x) = \overline{h(x, y)}. $$ 特に, $h(x, x)$ は実数である.
(v-a) 任意の $x\in V$ に対して, $$ h(x, x)\geq 0. $$
(v-b) 任意の $x\in V$ に対して, $$ h(x, x)=0 \Longleftrightarrow x=0. $$
$V$ において内積が定義されているとき, $V$ を計量ベクトル空間という. 特に, $K=\mathbb{R}$ のとき, $V$ を実計量ベクトル空間といい, $K=\mathbb{C}$ のとき, $V$ を複素計量ベクトル空間という.
計量ベクトル空間は, 内積空間, 前 Hilbert 空間, 一般 Euclid 空間, 一般ユニタリ空間などと呼ばれることもある.
$h:V\times V\rightarrow K$ が $K$ 上のベクトル空間 $V$ 上の内積とする. 各 $x$, $y\in V$ に対して, $h(x, y)$ を $x$ と $y$ との内積といい, $(x\mid y)$ と書く.
$V$ を $K$ 上の計量ベクトル空間とする. 各 $x\in V$ に対して, $\lVert{x}\rVert=\sqrt{(x\mid x)}$ を $x$ のノルムあるいは長さという.
最終更新日:2011年11月02日