$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

$R$ を環, $\mathfrak{m}$ を $R$ の Jacobson 根基, $r\in R$ とする. このとき, $r\in\mathfrak{m}$ であるための必要十分条件は, 任意の $s\in R$ に対して, $1-sr$ が左逆元を持つことである. このことを証明せよ.

解答例 1

$r\in\mathfrak{m}$ とする. もし仮に, ある $s\in R$ が存在して $R(1-sr)\neq R$ が成り立つとすると, $R(1-sr)$ は $R$ の左イデアルだから, $R$ の極大左イデアル $L_{0}$ で $R(1-sr)$ を含むものが存在する. 特に, $1-sr\in L_{0}$ となる. 一方, $\mathfrak{m}$ は $R$ のすべての極大左イデアルの共通部分だから, $r\in L_{0}$. よって, $sr\in L_{0}$ である. ゆえに, $1\in L_{0}$ であり, $L_{0}=R$ となる. これは $L_{0}$ が $R$ の極大左イデアルであることに反する. したがって, 任意の $s\in R$ に対して, $R(1-sr)=R$. 特に, $1\in R(1-sr)$ だから, ある $t\in R$ が存在して, $1=t(1-sr)$. すなわち, $1-sr$ は左逆元をもつ.

逆に, $r\not\in\mathfrak{m}$ とする. ある極大イデアル $L_{1}$ が存在して, $r\not\in L_{1}$. もし仮に $Rr+L_{1}\neq R$ とすれば, $Rr+L_{1}$ は $L_{1}$ を含む $R$ のイデアルとなり, $L_{1}$ の極大性に反する. ゆえに, $Rr+L_{1}=R$ となる. よって, $$ 1 = sr + x,\quad x\in R,\quad x\in L_{1} $$ と表せる. このとき, $1-sr=x$ は $L_{1}$ の元である. これがもし仮に左逆元 $t\in R$ を持てば, $1=t(1-sr)\in L_{1}$ であり, $L_{1}=R$ となって, $L_{1}$ が $R$ の極大左イデアルであることに反する. したがって, $1-sr$ は左逆元を持たない.

最終更新日:2011年11月02日

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