$R$ を環とし, $M$, $M'$ を左 $R$ 加群とする. このとき, $M$ から $M'$ への $R$ 準同型写像全体からなる集合 $\mathrm{Hom}_R(M, M')$ は加法群になることを確かめよ.
解答例 1
$H=\mathrm{Hom}_R(M, M')$ とおく.
各 $f$, $g\in H$ に対して, 写像 $f+g: M\rightarrow M'$ を $$ (f+g)(x) = f(x) + g(x)\quad (x\in M) $$ によって定義すれば, $f+g\in H$ である. 実際, 任意の $x$, $y\in M$, $r\in R$ に対して, \begin{align*} (f+g)(x+y) &= f(x+y) + g(x+y) \\ &= \bigl(f(x) + f(y)\bigr) + \bigl(g(x) + g(y)\bigr) \\ &= \bigl(f(x) + g(x)\bigr) + \bigl(f(y) + g(y)\bigr) \\ &= (f+g)(x) + (f+g)(y), \\ (f+g)(rx) &= f(rx) + g(ry) = rf(x) + rg(x) \\ &= r\bigl(f(x) + g(x)\bigr) = r\cdot (f+g)(x). \end{align*} この $f+g$ によって加法を定めると, $H$ は加法群になる. 以下, そのことを確かめる.
任意の $f$, $g$, $h\in H$ と $x\in M$ に対して, \begin{align*} \bigl((f+g)+h\bigr)(x) &= (f+g)(x) + h(x) = \bigl(f(x) + g(x)\bigr) + h(x) \\ &= f(x) + \bigl(g(x)+h(x)\bigr) = f(x) + (g+h)(x) \\ &= \bigl(f+(g+h)\bigr)(x) \end{align*} であるから, $(f+g)+h = f+(g+h)$. よって, 加法について結合法則が成り立つ.
単位元は零写像 $0$ である. 実際, 任意の $f\in H$, $x\in M$ に対して, $$ (f+0)(x) = f(x) + 0(x) = f(x) + 0 = f(x). $$
また, $f\in H$ に対して, 写像 $-f: M\rightarrow M'$ を $$ (-f)(x) = -f(x)\quad (x\in M) $$ によって定義すれば, $-f\in H$ である. 実際, 任意の $x$, $y\in M$, $r\in R$ に対して, \begin{align*} (-f)(x+y) &= -f(x+y) = \bigl(-f(x) + (-f(y))\bigr) \\ &= -f(x) + (-f(y)) \\ &= (-f)(x) + (-f)(y), \\ (-f)(rx) &= -f(rx) = -r\cdot f(x) = r\cdot (-f(x)) \\ &= r\cdot (-f)(x) \end{align*} であるから, $-f\in H$ である. この $-f$ が, 加法における $f$ の逆元になっている. 実際, 任意の $f\in H$ と $x\in M$ に対して, $$ \bigl(f+(-f)\bigr)(x) = f(x) + (-f(x)) = 0. $$ ゆえに, $f+(-f)=0$.
最終更新日:2011年11月02日