$R$ を環, $I$ を $R$ の左イデアルとする. $R$ 自身を左 $R$ 加群とみたとき, $I$ は $R$ の部分左 $R$ 加群なので, 剰余 $R$ 加群 $R/I$ が定まる. このとき, $I\neq R$ ならば, $$ \mbox{$R/I$ は単純左 $R$ 加群} \Longleftrightarrow \mbox{$I$ は極大左イデアル} $$ が成り立つことを証明せよ.
解答例 1
まず, 左イデアルの定義と左部分 $R$ 加群の定義から, $$ \mbox{$I$ は $R$ の左イデアル} \Longleftrightarrow \mbox{$I$ は $R$ の部分左 $R$ 加群} $$ である. また, $\pi:R\rightarrow R/I$ を自然な全射 $R$ 準同型とするとき, $I$ を含む $R$ の部分左 $R$ 加群全体の集合を $\Omega$, $R/I$ の部分左 $R$ 加群全体の集合を $\Omega'$ とすると, 写像 $$ \Phi:\Omega \longrightarrow \Omega',\qquad L\longmapsto f(L) $$ は全単射であり, その逆写像は $$ \Phi^{-1}:\Omega'\longrightarrow \Omega,\qquad L'\longmapsto f^{-1}(L') $$ である. さらに, 任意の $L_1$, $L_2\in\Omega$, $L'_1$, $L'_2\in\Omega'$ に対して, \begin{align*} L_1\subseteq L_2 &\Longrightarrow f(L_1)\subseteq f(L_2), \\ L'_1\subseteq L'_2 &\Longrightarrow f^{-1}(L'_1)\subseteq f^{-1}(L'_2) \end{align*} が成り立つ. ゆえに, $I\neq R$ ならば, \begin{align*} \mbox{$R/I$ は単純左 $R$ 加群} &\Longleftrightarrow \mbox{$R/I$ の部分左 $R$ 加群は $\{I\}$ と $R/I$ のみ} \\ &\Longleftrightarrow \mbox{$R$ の部分左 $R$ 加群で $I$ を含むものは $I$ と $R$ のみ} \\ &\Longleftrightarrow \mbox{$R$ の左イデアルで $I$ を含むものは $I$ と $R$ のみ} \\ &\Longleftrightarrow \mbox{$I$ は極大左イデアル}. \end{align*} ここで, 条件 $I\neq R$ は最後の同値において用いた.
最終更新日:2011年11月02日