$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

$R$ を環, $M$ を有限生成左 $R$ 加群, $N$ を $M$ の部分左 $R$ 加群とする. $N\neq M$ ならば, $M$ は $N$ を含むような極大部分左 $R$ 加群をもつことを証明せよ.

解答例 1

$M$ の真部分左 $R$ 加群で $N$ を含むようなもの全体を $\Gamma$ とおく. $\Gamma$ は包含関係について順序集合をなす. また, $N$ 自身が $\Gamma$ に属するので, $\Gamma$ は空でない.

以下, $\Gamma$ が帰納的順序集合になることを示す. そうすれば, Zorn の補題により, $\Gamma$ は極大元をもつ. それが求める極大部分左 $R$ 加群である.

$\Gamma_{0}$ を $\Gamma$ の空でない全順序部分集合とする. $\displaystyle L_{\infty}=\bigcup_{L\in\Gamma_{0}}L$ は $N$ を含むような $M$ の部分左 $R$ 加群である. いま, $M=L_{\infty}$ と仮定する. $M$ は有限生成なので, 有限個の元 $x_1$, $x_2$, $\ldots$, $x_n$ で生成される. $M=L_{\infty}$ と仮定したから, ある $L_1$, $L_2$, $\ldots$, $L_n\in\Gamma_{0}$ が存在して, $x_1\in L_1$, $x_2\in L_2$, $\ldots$, $x_n\in L_n$ となる. $\Gamma_{0}$ は全順序集合だから, $L_1$, $L_2$, $\ldots$, $L_n$ のうちで包含関係について最大のものが存在する. それを $L_0$ とおくと, $x_1$, $x_2$, $\ldots$, $x_n\in L_0$ となる. よって, $M=L_0\in\Gamma$ となる. これは $\Gamma$ の定め方に反するから, $M\neq L_{\infty}$ となる. ゆえに, $L_{\infty}\in\Gamma$ となり, $L_{\infty}$ は $\Gamma_0$ の $\Gamma$ における上界である. したがって, $\Gamma$ のすべての空でない全順序部分集合は上に有界である. すなわち, $\Gamma$ は帰納的順序集合である.

最終更新日:2011年11月02日

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