$R$ を環, $I$ を $R$ の左イデアルとする. $I\neq R$ ならば, $R$ は $I$ を含むような極大左イデアルをもつことを証明せよ.
解答例 1
$R$ の真の左イデアルで $I$ を含むようなもの全体からなる集合族を $\Gamma$ とおく. $\Gamma$ は包含関係について順序集合をなす. また, $I$ 自身が $\Gamma$ に属するので, $\Gamma$ は空でない.
以下, $\Gamma$ が帰納的順序集合になることを示す. そうすれば, Zorn の補題により, $\Gamma$ は極大元をもつ. それが求める極大左イデアルである.
$\Gamma_0$ を $\Gamma$ の空でない全順序部分集合とする. $\displaystyle J_{\infty}=\bigcup_{J\in\Gamma_0}J$ は $I$ を含むような $R$ の左イデアルである. もし仮に $R=J_{\infty}$ とすると, $1\in J_{\infty}$ となるから, ある $J\in\Gamma_0$ が存在して, $1\in J$. よって, $R=J\in\Gamma$ となる. これは $\Gamma$ の定め方に反するから, $R\neq J_{\infty}$ となる. ゆえに, $J_{\infty}\in\Gamma$ となり, $J_{\infty}$ は $\Gamma_0$ の $\Gamma$ における上界である. したがって, $\Gamma$ のすべての空でない全順序部分集合は上に有界である. すなわち, $\Gamma$ は帰納的順序集合である.
最終更新日:2011年11月02日