$I$ を $\mathbb{R}$ の区間とし, $f(x)$ を $I$ 上の狭義凸関数とする. $x_i\in I$, $p_i>0$ ($i=1$, $2$, $\ldots$, $n$) かつ $\displaystyle\sum_{i=1}^{n}p_i=1$ ならば, \begin{equation} f\left( \sum_{i=1}^{n}p_ix_i \right) \leq \sum_{i=1}^{n}p_if(x_i) \tag{$*$} \end{equation} が成り立つ. このことを証明せよ.
解答例 1
$n$ に関する数学的帰納法により証明する.
$n=1$ のとき, $p_1=1$ であり, 自明な等式 $f(x_1)=f(x_1)$ が成り立つ.
$n=2$ のとき, $x_1\neq x_2$ ならば, $f(x)$ が狭義凸関数であることから \begin{align*} f(p_1x_1+p_2x_2) &= f\bigl(p_1x_1+(1-p_1)x_2\bigr) \\ &< p_1f(x_1)+(1-p_1)f(x_2) \\ &= p_1f(x_1)+p_2f(x_2) \end{align*} であり, $x_1=x_2$ ならば, \begin{align*} f(p_1x_1+p_2x_2) &= f(p_1x_1+p_2x_1) \\ &= f\bigl((p_1+p_2)x_1\bigr) = f(x_1) \\ &= (p_1+p_2)f(x_1) \\ &= p_1f(x_1)+p_2f(x_1) \\ &= p_1f(x_1)+p_2f(x_2) \end{align*} である. ゆえに, $$ f(p_1x_1+p_2x_2) \leq p_1f(x_1)+p_2f(x_2) $$ となる. 等号成立は $x_1=x_2$ のときに限る.
$n=k$ のとき, 不等式 ($*$) が成立し, 等号成立条件が $x_1=x_2=\cdots=x_k$ であると仮定する. さらに, $p_i>0$ ($i=1$, $2$, $\ldots$, $k+1$) かつ $\displaystyle\sum_{i=1}^{k+1}p_i=1$ と仮定する. $\displaystyle q = \sum_{i=1}^{k}p_i$ とおくと, $$ q+p_{k+1}=1,\quad \sum_{i=1}^k\frac{p_i}{q} = 1 $$ となる. 不等式 ($*$) の左辺を $L$ とおくと, \begin{align*} L &= f\left( \left(\sum_{i=1}^{k}p_ix_i \right) + p_{k+1}x_{k+1}\right) \\ &= f\left( q\left(\sum_{i=1}^{k}\frac{p_i}{q}x_i \right) + p_{k+1}x_{k+1}\right). \end{align*} $q+p_{k+1}=1$ であり, $n=2$ のとき ($*$) は成り立つから, \begin{equation} L\leq q\,f\left(\sum_{i=1}^{k}\frac{p_i}{q}x_i \right) + p_{k+1}f(x_{k+1}). \tag{1} \end{equation} さらに, 帰納法の仮定として, $n=k$ のとき ($*$) が成り立つとしたから, \begin{align} L &\leq q\left(\sum_{i=1}^{k}\frac{p_i}{q}f(x_i)\right) + p_{k+1}f(x_{k+1}) \tag{2} \\ &=\sum_{i=1}^{k+1}p_if(x_i). \notag \end{align} ゆえに, $n=k+1$ のとき ($*$) が成り立つ.
$n=k+1$ のときの ($*$) において等号が成り立つのは, (1), (2) の両方において等号が成り立つときである. なぜなら, (1), (2) のどちらか一方で等号が成り立たなければ, ($*$) における $\leq $ は $<$ になる. (2) で等号が成り立つのは $x_1=x_2=\cdots=x_k$ のときに限る. さらに, (1) において等号が成り立てば, \begin{align*} x_{k+1} &= \sum_{i=1}^{k}\frac{p_k}{q}x_i = \sum_{i=1}^{k}\frac{p_k}{q}x_k \\ &= x_k\sum_{i=1}^k\frac{p_k}{q} = x_k. \end{align*} ゆえに, $x_1=x_2=\cdots=x_k=x_{k+1}$ となる.
以上により, すべての $n$ について不等式 ($*$) が成り立ち, 等号が成り立つのは $x_1=x_2=\cdots=x_n$ のときに限ることが示された.
最終更新日:2011年11月02日