$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

$D$ を $\mathbb{C}$ の領域, $f(z)$ を $D$ 上の正則関数とする. $f(z)$ の絶対値 $\lvert f(z)\rvert$ が $D$ 上の定数関数ならば, $f(z)$ も $D$ 上の定数関数である. このことを証明せよ.

解答例 1

$\lvert f(z)\rvert=c$ とおく. $c=0$ のとき, $f(z)=0$ であるから, $f(z)$ は定数関数である. そこで, 以下, $c\neq 0$ と仮定する.

$\mathbb{C}$ の領域 $D$ に対応する $\mathbb{R}^2$ の領域を $D'$ とおく: $$ D' = \{ (x, y)\in\mathbb{R}^2 \mid x+y\sqrt{-1}\in D\}. $$ $z=x+y\sqrt{-1}$, $x$, $y\in\mathbb{R}$ とする. $D'$ 上の実数値関数 $u$, $v$ を $$ u(x, y) = \mathop{\mathrm{Re}}f(z),\quad v(x, y) = \mathop{\mathrm{Im}}f(z) $$ によって定める. すると, \begin{align} f(z) &= u(x, y)+v(x, y)\sqrt{-1}, \tag{1}\\ f'(z) &= u_x(x, y) + v_x(x, y)\sqrt{-1} \tag{2} \end{align} が成り立つ. (1) より, \begin{equation} u(x, y)^2+v(x, y)^2 = \lvert f(z)\rvert^2 = c^2. \tag{3} \end{equation} 両辺を $x$, $y$ で偏微分すると, \begin{align*} & 2uu_x + 2vv_x = 0, \\ & 2uu_y + 2vv_y = 0. \end{align*} 両辺を $2$ で割ると, \begin{align} & uu_x + vv_x = 0, \tag{4}\\ & uu_y + vv_y = 0. \tag{5} \end{align} (5) と Cauchy-Riemann の方程式 $$ u_x = v_y,\quad u_y = -v_x $$ より, $$ - uv_x + vu_x = 0. $$ これと (4) より, \begin{align*} & (u^2+v^2)u_x = 0, \\ & (u^2+v^2)v_x = 0 \end{align*} が得られる. 任意の $(x, y)\in D'$ に対して, 仮定と (3) より $u^2+v^2\neq 0$ であるから, $u_x=v_x=0$ となる. (2) より, 任意の $z\in D$ に対して $f'(z)=0$. したがって, $f(z)$ は $D$ 上の定数関数である.

最終更新日:2011年11月02日

©2003-2011 よしいず