$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

複素関数に関する極限 $\displaystyle\lim_{z\to 0}\frac{\overline{z}}{z}$ は存在しないことを証明せよ.

解答例 1

$a\in\mathbb{R}$, $a\neq 0$ とする. $t$ を実変数とし, $z=t(1+a\sqrt{-1})$ とおく. $t\to 0$ とすれば $z\to 0$ となる. 一方, $$ \frac{\overline{z}}{z} = \frac{t(1-a\sqrt{-1})}{t(1+a\sqrt{-1})} = \frac{1-a\sqrt{-1}}{1+a\sqrt{-1}} $$ であり, 右辺の値は $a$ ごとに異なる. もし極限値が存在すれば, $z\to 0$ の近づき方によらず一意的に定まることから, 右辺の値は $a$ の値によらず一定のはずである. 今の場合にはそうでないから, $\displaystyle \lim_{z\to 0}\frac{\overline{z}}{z}$ は存在しない.

最終更新日:2011年11月02日

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