$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

$K$ を体とし, $V$ を $K$ 上の有限次元ベクトル空間, $W_1$, $W_2$ を $V$ の部分空間とする. このとき, $$ \dim(W_1+W_2) = \dim W_1 + \dim W_2 - \dim(W_1\cap W_2) $$ が成り立つことを証明せよ.

解答例 1

$p = \dim W_1$, $q = \dim W_2$, $r = \dim(W_1\cap W_2)$ とおき, $W_1\cap W_2$ の基底を $u_1$, $u_2$, $\ldots$, $u_r$ とする. $W_1\cap W_2$ は $W_1$ の部分空間であるから, $r\leq p$ であり, 適当な $u'_{r+1}$, $u'_{r+2}$, $\ldots$, $u'_p$ を選んで \begin{equation} \begin{array}{llllllll} u_1, & u_2, & \ldots, & u_r, & u'_{r+1}, & u'_{r+2}, & \ldots, & u'_p \end{array} \tag{1} \end{equation} が $W_1$ の基底であるようにすることができる. 同様に, $W_1\cap W_2$ は $W_2$ の部分空間であるから, $r\leq q$ であり, 適当な $u''_{r+1}$, $u''_{r+2}$, $\ldots$, $u''_q$ を選ぶと \begin{equation} \begin{array}{llllllll} u_1, & u_2, & \ldots, & u_r, & u''_{r+1}, & u''_{r+2}, & \ldots, & u''_q \end{array} \tag{2} \end{equation} が $W_2$ の基底になる. このとき, \begin{equation} \begin{array}{llllllllllll} u_1, & u_2, & \ldots, & u_r, & u'_{r+1}, & u'_{r+2}, & \ldots, & u'_p, & u''_{r+1}, & u''_{r+2}, & \ldots, & u''_q \end{array} \tag{3} \end{equation} は $K$ 上1次独立である. 実際, \begin{equation} \sum_{i=1}^ra_iu_i + \sum_{j=r+1}^pa'_ju'_j + \sum_{k=r+1}^qa''_ku''_k = 0, \quad a_i,\,a'_j,\,a''_k\in K \tag{4} \end{equation} とすると, $$ -\sum_{j=r+1}^pa'_ju'_j = \sum_{i=1}^ra_iu_i + \sum_{k=r+1}^qa''_ku''_k \in W_1\cap W_2 $$ より, $$ -\sum_{j=r+1}^pa'_ju'_j = \sum_{i=1}^rb_iu_i,\quad b_i\in K $$ と表すことができて, $$ \sum_{i=1}^rb_iu_i + \sum_{j=r+1}^pa'_ju'_j = 0. $$ (1) が $K$ 上1次独立であることから, \begin{align} &b_1 = b_2 = \cdots = b_r = 0, \notag \\ &a'_{r+1} = a'_{r+2} = \cdots = a'_p = 0. \tag{5} \end{align} (5) を (4) に代入すると, $$ \sum_{i=1}^ra_iu_i + \sum_{k=r+1}^qa''_ku''_k = 0. $$ (2) は $K$ 上1次独立であるから, \begin{align*} &a_1 = a_2 = \cdots = a_r = 0, \\ &a''_{r+1} = a''_{r+2} = \cdots = a''_q = 0. \end{align*} ゆえに, (3) は $K$ 上1次独立である.

(3) によって生成される $V$ の部分空間を $U$ とする. $W_1+W_2$ は (3) を全て含むから, $U\subseteq W_1+W_2$. 逆に, $U$ は $W_1$, $W_2$ の両方を含むから, $W_1+W_2\subseteq U$. ゆえに, $W_1+W_2=U$ となり, $W_1+W_2$ は (4) によって生成される.

以上より, (3) は $W_1+W_2$ の基底になり, \begin{align*} \dim(W_1+W_2) &= r + (p-r) + (q-r) = p+q-r \\ &= \dim W_1 + \dim W_2 - \dim(W_1\cap W_2) \end{align*} が成り立つ.

解答例 2

$W_1$, $W_2$ の直積集合 $W_1\times W_2$ に自然な線型空間の構造を入れた直和 $W_1\oplus W_2$ を考え, 写像 $f$ を $$ f: W_1\oplus W_2\longrightarrow W_1+W_2,\quad (x, y)\longmapsto x+y $$ によって定める. このとき, 任意の $x$, $x'\in W_1$, $y$, $y'\in W_2$, $a\in K$ に対して, \begin{align*} f\bigl((x, y)+(x', y')\bigr) &= f\bigl( (x+x', y+y') \bigr) \\ &= (x + x') + (y + y') \\ &= (x + y) + (x' + y') \\ &= f\bigl((x, y)\bigr) + f\bigl((x', y')\bigr), \\ f\bigl(a(x, y)\bigr) &= f\bigl((ax, ay)\bigr) \\ &= ax+ay = a(x+y) \\ &= af\bigl((x, y)\bigr). \end{align*} ゆえに, $f$ は線型写像である. また, 任意の $z\in W_1+W_2$ に対して, ある $x\in W_1$, $y\in W_2$ が存在して, $$ z = x + y = f\bigl((x, y)\bigr). $$ ゆえに, $f$ は全射である. 準同型定理により, $$ W_1+W_2 \cong W_1\oplus W_2 / \ker f. $$ 一方, $x+(-x)=0$ より, 写像 $$ g: W_1\cap W_2 \longrightarrow \ker f,\quad x\longmapsto (x, -x) $$ が定まる. $g$ が線型写像かつ単射であることは明らかである. さらに, 任意の $(x, y)\in\ker f$ に対して, $$ (x, y)\in\ker f \Longrightarrow f(x, y) = 0 \Longrightarrow x + y = 0 \Longrightarrow y = -x\in W_1\cap W_2 $$ であるから, $g(x) = (x, -x) = (x, y)$. よって, $g$ は全射である. ゆえに, $\ker f$ と $W_1\cap W_2$ とは同型である. したがって, \begin{align*} \dim(W_1+W_2) &= \dim(W_1\oplus W_2) - \dim\ker f \\ &= \dim W_1 + \dim W_2 - \dim(W_1\cap W_2). \end{align*}

最終更新日:2011年11月02日

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