$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

$K=\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$ とする. $V$ を $K$ 上の有限次元計量ベクトル空間, $W$ を $V$ の部分空間, $W^{\bot}$ を $W$ の直交補空間とする. このとき, $V$ は $W$ と $W^{\bot}$ との直和 $W\oplus W^{\bot}$ に一致することを証明せよ.

解答例 1

$K=\mathbb{C}$ の場合を証明する. $K=\mathbb{R}$ の場合も同様である.

$r=\dim W$ とし, $u_1$, $u_2$, $\ldots$, $u_r$ を $W$ の正規直交基底とする. $x\in V$ とし, $$ x_1 = \sum_{i=1}^r(x\mid u_i)u_i,\quad x_2 = x-x_1 $$ とおく. $x_1\in W$ である. また, $$ (u_i\mid u_j) = \begin{cases} 1 & \mbox{$i=j$ のとき} \\ 0 & \mbox{$i\neq j$ のとき} \end{cases}\quad (1\leq i\leq n,\,1\leq j\leq n) $$ が成り立つから, 各 $j=1$, $2$, $\ldots$, $r$ に対して, \begin{align*} (x_2\mid u_j) &= (x-x_1\mid u_j) = (x\mid u_j) - (x_1\mid u_j) \\ &= (x\mid u_j) - \left( \sum_{i=1}^r(x\mid u_i)u_i \Biggm\vert u_j \right) \\ &= (x\mid u_j) - \sum_{i=1}^r\bigl( (x\mid u_i)u_i \mid u_j \bigr) \\ &= (x\mid u_j) - \sum_{i=1}^r(x\mid u_i)(u_i\mid u_j) \\ &= (x\mid u_j) - (x\mid u_j)(u_j\mid u_j) = 0. \end{align*} これより, 任意の $y\in W$ に対して, $$ y = \sum_{i=1}^ra_iu_i,\quad a_i\in\mathbb{C} $$ とおくと, \begin{align*} (x_2\mid y) &= \left( x_2 \Biggm\vert \sum_{i=1}^ra_iu_i\right) \\ &= \sum_{i=1}^r (x_2\mid a_iu_i) \\ &= \sum_{i=1}^r\overline{a_i}(x_2\mid u_i) = 0. \end{align*} よって, $x_2\in W^{\bot}$ であり, $$ x = x_1+x_2,\quad x_1\in W_1,\quad x_2\in W_2 $$ となる. したがって, $V=W+W^{\bot}$.

$x\in W\cap W^{\bot}$ とすると, $x\in W^{\bot}$ より $x$ は $W$ の任意のベクトルと直交する. $x\in W$ なので $x$ 自身と直交する. すなわち, $(x\mid x)=0$. これより $x=0$ を得る. したがって, $W\cap W^{\bot}=\{0\}$.

$V=W+W^{\bot}$ かつ $W\cap W^{\bot}=\{0\}$ より, $V=W\oplus W^{\bot}$.

最終更新日:2011年11月02日

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