$f(x)$ は閉区間 $[a, b]$ で連続であるとし, 任意の $x\in [a, b]$ に対して $f(x)\neq 0$ であるとする. このとき, \begin{equation} (b-a)^2 \leq \left(\int_a^b f(x)\,dx \right)\left(\int_a^b \frac{1}{f(x)}\,dx \right) \tag{$*$} \end{equation} が成り立つことを証明せよ.
解答例 1
まず, $[a, b]$ で常に $f(x)>0$ または 常に $f(x)<0$ かのどちらかである. なぜなら, もし仮に, ある $x_1$, $x_2\in [a, b]$ が存在して $f(x_1)>0$ かつ $f(x_2)<0$ であるとすれば, 中間値の定理より $x_1$ と $x_2$ との間に $f(x_0)=0$ となる実数 $x_0$ が存在することになり, 問題の仮定に反する.
特に, $1/f(x)$ は $[a, b]$ の連続関数である.
$f(x)>0$ の場合を先に証明する. Schwarz の不等式より, \begin{align} \left(\int_a^b f(x)\,dx \right)\left(\int_a^b \frac{1}{f(x)}\,dx \right) &\geq \left( \int_a^b\sqrt{f(x)}\cdot\frac{1}{\sqrt{f(x)}}\,dx \right)^2 \tag{1}\\ &= \left(\int_a^b dx \right)^2 = (b-a)^2. \notag \end{align} $f(x)<0$ の場合, $f(x)$ の代わりに $-f(x)$ を考えることで $f(x)>0$ の場合に帰着する. これで, 不等式 ($*$) が証明された.
もし ($*$) で等号が成立すれば, (1) においてSchwarz の不等式を適用するところで等号が成り立つ. $f(x)$, $1/f(x)$ はともに恒等的に $0$ ではなく, 互いに常に同符号なので, ある実数 $\alpha>0$ が存在して, すべての $x\in [a, b]$ に対して $$ 1/f(x) = \alpha f(x) $$ が成り立つ. よって, すべての $x\in [a, b]$ に対して $$ f(x) = \begin{cases} \sqrt{1/\alpha}, & \mbox{$f(x)>0$ のとき} \\ -\sqrt{1/\alpha}, & \mbox{$f(x)<0$ のとき}. \end{cases} $$ すなわち, $f(x)$ は定数関数である. 逆に, $f(x)$ が定数関数ならば, ($*$) で等号が成り立つことはすぐに確かめられる.
以上より, ($*$) で等号が成立するための必要十分条件は, $f(x)$ が $0$ でない定数関数であることである.
最終更新日:2011年11月02日