$n$ を正の整数, $a_1$, $a_2$, $\ldots$, $a_n$ を正の実数とするとき, 不等式 \begin{equation} \frac{n^2}{a_1+a_2+\cdots+a_n}\leq \frac{1}{a_1}+\frac{1}{a_2}+\cdots+\frac{1}{a_n} \tag{$*$} \end{equation} が成り立つことを証明せよ.
解答例 1
相加相乗平均の関係 \begin{equation} \sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n} \leq \frac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n} \tag{1} \end{equation} より, \begin{equation} \frac{n^2}{a_1+a_2+\cdots+a_n} \leq \frac{n}{\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n}}. \tag{2} \end{equation} また, 各 $a_1$, $a_2$, $\ldots$, $a_n$ の逆数に対して相加相乗平均の関係を適用すると, \begin{equation} \frac{1}{\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n}} = \sqrt[n]{\biggl.\frac{1}{a_1}\cdot\frac{1}{a_2}\cdots\frac{1}{a_n}}\biggr. \leq \frac{1}{n}\biggl(\frac{1}{a_1}+\frac{1}{a_2}+\cdots+\frac{1}{a_n} \biggr) \tag{3} \end{equation} であるから, \begin{equation} \frac{n}{\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n}} \leq \frac{1}{a_1}+\frac{1}{a_2}+\cdots+\frac{1}{a_n}. \tag{4} \end{equation} (2), (4) より, 不等式 ($*$) が得られる.
($*$) において等号が成り立つとする. そのとき, (2), (4) の両方において等号が成り立つ. よって, (1), (3) の両方において等号が成り立つ. 相加相乗平均の関係における等号成立条件から, $a_1=a_2=\cdots=a_n$ かつ $\displaystyle\frac{1}{a_1} = \frac{1}{a_2} = \cdots = \frac{1}{a_n}$ が得られる. これは $a_1=a_2=\cdots=a_n$ と同値である. 逆に, $a_1=a_2=\cdots=a_n$ が成り立てば, ($*$) において等号が成り立つ. したがって, ($*$) における等号成立条件は $a_1=a_2=\cdots=a_n$ である.
最終更新日:2011年11月02日