$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

素数個の元からなる環は体であることを証明せよ.

解答例 1

$p$ を素数とし, $R$ を $p$ 個の元からなる環とする. $0_{R}$ を $R$ の零元とし, $1_{R}$ を $R$ の単位元とする.

加法群としての $R$ において, $1_{R}$ を $p$ 倍すると $0$ になる. すなわち, $p\cdot 1_{R}=0$ である. $R\neq\{0_{R}\}$ より $1_{R}\neq 0_{R}$ なので, $R$ における $1_{R}$ の位数は $p$ である. ゆえに, \begin{equation} R = \{ n\cdot 1_{R} \mid n=0, 1, 2, \ldots, p-1 \} \tag{1} \end{equation} が成り立つ. 環準同型 $$ \mu:\mathbb{Z}\longrightarrow R,\quad n\longmapsto n\cdot 1_{R} $$ を考えると, (1) より $\mu$ は全射であり, \begin{align*} n\in\ker{\mu} &\Longleftrightarrow n\cdot 1_{R} = 0_{R} \\ &\Longleftrightarrow n\equiv 0\!\!\!\pmod{p} \\ &\Longleftrightarrow n\in p\mathbb{Z} \end{align*} であるから, $\ker{\mu}=p\mathbb{Z}$. 準同型定理により, 環としての同型 $$ \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\cong R $$ が得られる. したがって, $R$ は体である.

解答例 2

$p$ を素数とし, $R$ を $p$ 個の元からなる環とする.

$a$ を $0$ でない $R$ の元とし, $$ I_{a}=\{x\in R\mid xa=0\} $$ とおく. $I_{a}$ は $R$ の左イデアルである. 特に, $I_{a}$ は $R$ の加法群としての部分群なので, $\lvert I_{a}\rvert$ は $\lvert R\rvert$ の約数である. よって, $\lvert I_{a}\rvert = 1$ または $\lvert I_{a}\rvert = p$. すなわち, $I_{a}=\{0\}$ または $I_{a}=R$. ところが, $1\not\in I_{a}$ であるから, $I_{a}=\{0\}$ となる. ゆえに, 任意の $x\in R$ に対して, $xa=0$ ならば $x=0$. すなわち, $a$ は右零因子ではない. したがって, $R$ は $0$ 以外に右零因子をもたない. 同様にして, $R$ が $0$ 以外に左零因子をもたないこともいえる.

さて, $R$ の中心 $$ Z(R) = \{ a\in R\mid ax=xa\,(\forall x\in R)\} $$ は, $R$ の可換な部分環である. $Z(R)$ は $0$ 以外に零因子をもたないから, 整域である. $Z(R)$ は $R$ の加法群としての部分群なので, $\lvert Z(R)\rvert$ は $\lvert R\rvert$ の約数である. よって, $\lvert Z(R)\rvert = 1$ または $\lvert Z(R)\rvert = p$. すなわち, $Z(R)=\{0\}$ または $Z(R)=R$. ところが, $1\in Z(R)$ であるから, $Z(R)=R$. ゆえに, $R$ は整域である. 一般に有限整域は体であるから, $R$ は体である.

最終更新日:2011年11月02日

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