有限環の元は零因子か単元であることを証明せよ.
解答例 1
$R$ を有限環とする. $R$ の零因子でない元 $a$ が単元であることを示す. 写像 $$ f_{a}: R\longrightarrow R,\quad x\longmapsto ax $$ を考える. $a$ は零因子でないので, 任意の $x$, $y\in R$ に対して, \begin{align*} f_{a}(x)=f_{a}(y) &\Longrightarrow ax = ay \\ &\Longrightarrow a(x-y)=0 \\ &\Longrightarrow x-y=0 \\ &\Longrightarrow x=y. \end{align*} ゆえに, $f_{a}$ は単射であり, $\lvert f_{a}(R)\rvert=\lvert R\rvert<\infty$. これと $f_{a}(R)\subseteq R$ から, $f_{a}(R)=R$ でなければならない. すなわち, $f_{a}$ は全射である. 特に, ある $b\in R$ が存在して, $$ 1 = f_{a}(b) = ab. $$ さらに, $b$ に対して写像 $f_{b}$ を考えれば, ある $c\in R$ が存在して, $$ 1 = f_{b}(c) = bc. $$ このとき, $$ ba = ba(bc) = b(ab)c = bc = 1. $$ したがって, $ab=ba=1$ となり, $a$ は $R$ の単元である.
最終更新日:2011年11月02日