Keywords: Hölder の不等式, ヘルダーの不等式
$(a_i)$, $(b_i)$ を実数列とする. $p$, $q$ を正の実数とし, \begin{equation} \frac{1}{p} + \frac{1}{q} = 1 \tag{$*$} \end{equation} を満たすとする. このとき, 任意の整数 $n\geq 1$ に対して, 不等式 \begin{equation} \sum_{i=1}^n\lvert a_ib_i\rvert \leq \left(\sum_{i=1}^n\lvert a_i\rvert^p\right)^{\frac{1}{p}} \left(\sum_{i=1}^n\lvert b_i\rvert^q\right)^{\frac{1}{q}} \tag{$*$$*$} \end{equation} が成り立つことを証明せよ.
解答例 1
$a_1=a_2=\cdots=a_n=0$ または $b_1=b_2=\cdots=b_n=0$ のとき, ($*$$*$) において等号が成り立つ. 以下, $a_1$, $a_2$, $\ldots$, $a_n$ の少なくとも $1$ つは $0$ でなく, かつ $b_1$, $b_2$, $\ldots$, $b_n$ の少なくとも $1$ つは $0$ でないとする.
正の実数 $p$, $q$ が ($*$) を満たすとき, 任意の実数 $A\geq 0$, $B\geq 0$ に対して, 不等式 \begin{equation} AB \leq \frac{A^p}{p} + \frac{B^q}{q} \tag{1} \end{equation} が成り立つことを用いる. $$ r = \sum_{i=1}^n\lvert a_ib_i\rvert, \quad s = \left(\sum_{i=1}^n\lvert a_i\rvert^p\right)^{\frac{1}{p}}, \quad t = \left(\sum_{i=1}^n\lvert b_i\rvert^q\right)^{\frac{1}{q}} $$ とおく. $a_1$, $a_2$, $\ldots$, $a_n$ の少なくとも $1$ つは $0$でなく, かつ $b_1$, $b_2$, $\ldots$, $b_n$ の少なくとも $1$ つは $0$ でないから, $s>0$, $t>0$ である.
$A=\lvert a_i\rvert/s$, $B=\lvert b_i\rvert/t$ とおき, 不等式 (1) に代入すると, \begin{equation} \frac{\lvert a_ib_i\rvert}{st} \leq \frac{\lvert a_i\rvert^p}{ps^p} + \frac{\lvert b_i\rvert^q}{qt^q}. \tag{2} \end{equation} 両辺において $i=1$, $2$, $\ldots$, $n$ について和をとると, \begin{equation} \frac{r}{st} \leq \frac{s^p}{ps^p}+\frac{t^q}{qt^q} = \frac{1}{p}+\frac{1}{q} = 1. \tag{3} \end{equation} これより, $r\leq st$. よって, ($*$$*$) が得られる.
(1) の等号成立条件は $B=A^{p-1}$ である. ($*$$*$) において等号が成立するとき, すなわち $r=st$ が成り立つとき, $k=t/s^{p-1}$ とおくと, $k>0$ であり, $i=1$, $2$, $\ldots$, $n$ に対して, \begin{equation} \lvert b_i\rvert = k\lvert a_i\rvert^{p-1}. \tag{4} \end{equation} 実際, もし仮にある番号 $i$ が存在して (2) で等号が成り立たないとすれば, (3) でも等号が成り立たないので, $r<st$ となる.
逆に, ある実数 $k>0$ が存在して, $i=1$, $2$, $\ldots$, $n$ に対して (4) が成り立てば, ($*$) より $1/q = 1-1/p$, $(p-1)q = p$ であるから, \begin{align*} r &= k\sum_{i=1}^n\lvert a_i\rvert^p = k\left(\sum_{i=1}^n\lvert a_i\rvert^p\right)^{\frac{1}{p}} \left(\sum_{i=1}^n\lvert a_i\rvert^p\right)^{1-\frac{1}{p}} \\ &= \left(\sum_{i=1}^n\lvert a_i\rvert^p\right)^{\frac{1}{p}} \left(\sum_{i=1}^n\lvert a_i\rvert^{(p-1)q}\right)^{\frac{1}{q}} = st. \end{align*} ゆえに, ($*$$*$) において等号が成立する.
したがって, ($*$$*$) において等号が成立するための必要十分条件は, 次のいずれかが成り立つことである.
最終更新日:2011年11月02日