$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

周の長さが一定の三角形の中で面積が最大のものを求めよ.

解答例 1

周の長さを $2s$ とする. 三角形の $3$ 辺の長さを $x$, $y$, $z$ とおくと, \begin{equation} x+y+z=2s. \tag{1} \end{equation} 三角形の面積 $S$ は, Heron の公式より \begin{equation} S = \sqrt{s(s-x)(s-y)(s-z)}. \tag{2} \end{equation} 周の長さ $2s$ が一定のとき, 面積 $S$ が最大になるのは, $(s-x)(s-y)(s-z)$ が最大のときである.

$1$ 辺の長さは他の $2$ 辺の長さよりも短いから, $s-x$, $s-y$, $s-z$ はいずれも正である. 実際, \begin{align*} x+y>z &\Longrightarrow 2s = x+y+z > 2z \\ &\Longrightarrow s>z \\ &\Longrightarrow s-z>0. \end{align*} 他の場合も同様である. よって, 相加・相乗平均の関係 \begin{equation} \frac{(s-x)+(s-y)+(s-z)}{3} \geq \sqrt[3]{(s-x)(s-y)(s-z)} \tag{3} \end{equation} が成立する. 等号成立条件は $s-x=s-y=s-z$ である. (1) より $s=(s-x)+(s-y)+(s-z)$ だから, (3) は \begin{equation} \frac{s}{3}\geq \sqrt[3]{(s-x)(s-y)(s-z)} \tag{4} \end{equation} と同値である. 等号成立条件は (3) と同じである. $s>0$, $(s-x)(s-y)(s-z)>0$ だから, (4) は \begin{equation} \frac{s^3}{3^3}\geq (s-x)(s-y)(s-z) \tag{5} \end{equation} と同値である. 等号成立条件は (4) と同じで, $s-x=s-y=s-z$, したがって, $x=y=z$ である. このとき, $(s-x)(s-y)(s-z)$ は最大値 $s^3/3^3$ をとる. また, (1) より $$ x=y=z=\frac{2s}{3} $$ が得られる. これを (2) に代入して計算すれば $$ S = \sqrt{\biggl. s\cdot\biggl(s-\frac{2s}{3}\biggr)^3 \biggr.} = \sqrt{\biggl. s\cdot \biggl(\frac{s}{3}\biggr)^3 \biggr.} = \frac{s^2}{3\sqrt{3}}. $$ これが $S$ の最大値である.

以上より, $1$ 辺の長さが $2s/3$ の正三角形が求めるものである.

解答例 2

周の長さを $2s$ とする. 三角形の $3$ 辺の長さを $x$, $y$, $z$ とおくと, $$ x+y+z=2s. $$ 三角形の面積 $S$ は, Heron の公式より $$ S = \sqrt{s(s-x)(s-y)(s-z)}. $$ 周の長さ $2s$ が一定のとき, 面積 $S$ が最大になるのは, $(s-x)(s-y)(s-z)$ が最大のときである.

$1$ 辺の長さは他の $2$ 辺の長さよりも短いから, $x<s$, $y<s$, $z<s$ である. 実際, \begin{align*} z<x+y &\Longrightarrow 2z < x+y+z = 2s \\ &\Longrightarrow z<s. \end{align*} 他の場合も同様である. これと各辺の長さが正であることから, $$ 0< x< s,\quad 0< y< s,\quad 0< z< s. $$

$f(x,y)=(s-x)(s-y)(s-z)=(s-x)(s-y)(x+y-s)$ とおく. また \begin{align*} D &=\{ (x,y,z)\in\mathbb{R}^3 \mid 0< x< s,\,0< y< s,\,0< z< s\} \\ &=\{ (x,y,z)\in\mathbb{R}^3 \mid 0< x< s,\,0< y< s,\,s< x+y< 2s\} \end{align*} とおく. $D$ の閉包 $\overline{D}$ と境界 $\partial D$ は $$ \overline{D} =\{ (x,y,z)\in\mathbb{R}^3 \mid 0\leq x\leq s,\,0\leq y\leq s,\,s\leq x+y\leq 2s\},\quad \partial{D} = \overline{D}\setminus D. $$ $\overline{D}$ は $\mathbb{R}^2$ 内の有界閉領域であり, 関数 $f$ は連続だから, $f$ は $\overline{D}$ において最大値と最小値をとる. さらに, $\partial{D}$ で $f$ は最小値 $0$ をとる. したがって, $D$ において $f$ は最大値をとる.

最大値をとる点は, $x$, $y$ についての連立方程式 \begin{align*} f_x(x,y) &=(s-y)(2s-2x-y)=0, \\ f_y(x,y) &=(s-x)(2s-x-2y)=0 \end{align*} の解である. $s-x>0$, $s-y>0$ より, $$ 2s-2x-y=0,\quad 2s-x-2y=0. $$ これを解くと, ただ $1$ つの解 $$ x=y=\frac{2s}{3} $$ が得られる. よって, $(2s/3, 2s/3)$ が最大値を与える点である. またこのとき, $x+y+z=2s$ より $z=2s/3$ となる.

以上より, $1$ 辺の長さが $2s/3$ の正三角形が求めるものである.

解答例 3

周の長さを $2s$ とする. 三角形の $3$ 辺の長さを $x$, $y$, $z$ とおくと, \begin{equation} x+y+z=2s. \tag{1} \end{equation} 三角形の面積 $S$ は, Heron の公式より \begin{equation*} S = \sqrt{s(s-x)(s-y)(s-z)}. \end{equation*} 周の長さ $2s$ が一定のとき, 面積 $S$ が最大になるのは, $(s-x)(s-y)(s-z)$ が最大のときである.

$1$ 辺の長さは他の $2$ 辺の長さよりも短いから, $x<s$, $y<s$, $z<s$ である. 実際, \begin{align*} z<x+y & \Longrightarrow 2z < x+y+z = 2s \\ & \Longrightarrow z<s. \end{align*} 他の場合も同様である. これと各辺の長さが正であることから, \begin{equation} 0< x< s,\quad 0< y< s,\quad 0< z< s. \tag{2} \end{equation}

$D=\{ (x,y,z)\in\mathbb{R}^3 \mid 0< x< s,\,0< y< s,\,0< z< s\}$ とおく. $D$ の閉包 $\overline{D}$ と境界 $\partial D$ は $$ \overline{D} =\{ (x,y,z)\in\mathbb{R}^3 \mid 0\leq x\leq s,\,0\leq y\leq s,\,0\leq z\leq s\},\quad \partial{D} = \overline{D}\setminus D. $$ $f(x,y,z)=(s-x)(s-y)(s-z)$, $g(x,y,z)=x+y+z-2s$ とおく. また $$ E=\{ (x,y,z)\in\mathbb{R}^3 \mid g(x,y,z)=0 \} = \{ (x,y,z)\in\mathbb{R}^3 \mid x+y+z=2s \} $$ とおくと, $\overline{D}\cap E$ は $\mathbb{R}^3$ 内の有界閉領域であり, 関数 $f$ は連続だから, $f$ は $\overline{D}\cap E$ において最大値と最小値をとる. しかも, $\partial{D}\cap E$ で $f$ は最小値 $0$ をとる. したがって, $$ D\cap E = \{ (x,y,z) \mid 0<x<s,\,0<y<s,\,0<z<s,\, x+y+z=2s \} $$ において $f$ は最大値をとる. このことは, (1), (2) より, $S$ に最大値が存在することを意味する.

条件 $g(x,y,z)=0$ のもとで $f$ が最大値をとる点 (つまり, $D\cap E$ の点のなかで $f$ が最大になるもの) を Lagrange の未定乗数法で求める. $L(x,y,z)=f(x,y,z)-\lambda g(x,y,z)$ とおき, 連立方程式 \begin{align*} & L_x(x,y,z,\lambda) = -(s-y)(s-z)+\lambda = 0, \\ & L_y(x,y,z,\lambda) = -(s-x)(s-z)+\lambda = 0, \\ & L_z(x,y,z,\lambda) = -(s-x)(s-y)+\lambda = 0, \\ & L_{\lambda}(x,y,z,\lambda) = 2s-(x+y+z) = 0 \end{align*} を考える. 最初の $3$ つの式から $$ \lambda (s-x)=\lambda (s-y)=\lambda (s-z) = (s-x)(s-y)(s-z) $$ が得られる. $(x,y,z)\in D\cap E$ において, $(s-x)(s-y)(s-z)>0$ より $\lambda\neq 0$. ゆえに, $x=y=z$ である. $x+y+z=2s$ より, $x=y=z=2s/3$. したがって, $(2s/3,2s/3,2s/3)$ がただ $1$ つの停留点であり, 最大値をとる点である.

以上より, $1$ 辺の長さが $2s/3$ の正三角形が求めるものである.

最終更新日:2011年11月02日

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