実行列 $A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ について, ある自然数 $n$ が存在して $A^n=O$ であるとする.
(i) $ad-bc=0$ であることを示せ.
(ii) $A^2=O$ であることを示せ.
解答例 1
(i) 背理法で証明する. $ad-bc\neq 0$ と仮定する. もし $A=O$ なら, $ad-bc=0$ であり, 背理法の仮定に反するから, $A\neq O$ である. $ad-bc\neq 0$ のとき, 逆行列 $A^{-1}$ が存在する. 問題の仮定より, ある自然数 $n$ が存在して $A^n=O$ である. よって, $$ A=(A^{-1})^{n-1}A^n = (A^{-1})^{n-1}O = O. $$ これは $A\neq O$ に矛盾する. したがって, $ad-bc=0$ でなければならない.
(ii) ハミルトン・ケーリーの定理より $$ A^2-(a+d)A+(ad-bc)E=O. $$ (i) より $ad-bc=0$ であるから, \begin{equation} A^2 = (a+d)A. \tag{1} \end{equation} $n=1$, $2$ のとき, 明らかに $A^2=O$ である. $n\geq 3$ のとき, (1) を何度も適用することにより \begin{equation*} \begin{split} O = A^n &= A^2A^{n-2}=(a+d)AA^{n-2} \\ &= (a+d)A^{n-1} = (a+d)^2 A^{n-2} = \cdots = (a+d)^{n-1}A. \end{split} \end{equation*} よって, \begin{equation} (a+d)^{n-1}A = O. \tag{2} \end{equation} $a+d\neq 0$ とすると, (2) の両辺に $\displaystyle \frac{1}{(a+d)^{n-1}}$ を掛ければ $A=O$ が得られ, $a+d\neq 0$ に矛盾する. ゆえに $a+d=0$ である. このとき, (1) から $A^2=O$ が得られる.
最終更新日:2011年11月02日