$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

Description: 無限回微分可能であっても解析的ではない例. $C^{\infty}$ 級関数であっても解析関数ではない例.

$\mathbb{R}$ 上の関数 $f(x)$ を $$ f(x) = \begin{cases} \displaystyle e^{-1/x}, & \mbox{$x>0$} \\ 0, & \mbox{$x\leq 0$} \end{cases} $$ によって定める. このとき, $f(x)$ は $x=0$ で無限回微分可能であることを証明せよ.

解答例 1

$\mathbb{R}$ 係数多項式の列 $(P_n(x))$ を, 漸化式 $$ P_1(x) = 1, \quad P_{n+1}=x^2P_n'(x)-2nxP_n(x)+P_n(x)\; (n=1, 2, \ldots) $$ によって定めると, $n$ に関する数学的帰納法により, $n=1$, $2$, $\ldots$に対して $$ f^{(n)}(x) = \frac{P_n(x)e^{-1/x}}{x^{2n}}\; (x>0), \quad P_n(0) = 1 $$ となることがいえる.

このとき, $f(x)$ が $x=0$ で無限回微分可能であり, 各 $n$ について $f^{(n)}(0) = 0$ となることが, $n$ に関する数学的帰納法により示される.

実際, $n=1$ のとき, $x=0$ での右微分係数に関して, \begin{align*} f'_{+}(0) &= \lim_{x\to +0}\frac{f(x)-f(0)}{x-0} \\ &= \lim_{x\to +0}\frac{1}{xe^{1/x}} = \lim_{t\to +\infty}\frac{t}{e^t} = 0. \end{align*} ただし, 最後から2番目の等式で $t=1/x$ とおいた. 一方, $x=0$ での左微分係数に関しては, \begin{align*} f'_{-}(0) &= \lim_{x\to -0}\frac{f(x)-f(0)}{x-0} \\ &= \lim_{x\to -0}\frac{0}{x} = 0. \end{align*} $x=0$ での右微分係数と左微分係数とが一致するから, $f(x)$ は $x=0$ で微分可能であり, $f'(0)=0$.

$n\geq 2$ のとき, 帰納法の仮定を用いると, $x=0$ での右微分係数に関して, \begin{align*} f_{+}^{(n)}(0) &= \lim_{x\to +0}\frac{f^{(n-1)}(x)-f^{(n-1)}(0)}{x-0} \\ &= \lim_{x\to +0}\frac{f^{(n-1)}(x)}{x} = \lim_{x\to +0}\frac{P_{n-1}(x)}{x^{2n-1}e^{1/x}} \\ &= \lim_{x\to +0}\frac{1}{x^{2n-1}e^{1/x}} = \lim_{t\to +\infty}\frac{t^{2n-1}}{e^t} = 0. \end{align*} ただし, 最後から2番目の等式で $t=1/x$ とおいた. 一方, $x=0$ での左微分係数に関しては, \begin{align*} f_{-}^{(n)}(0) &= \lim_{x\to -0}\frac{f^{(n-1)}(x)-f^{(n-1)}(0)}{x-0} \\ &= \lim_{x\to -0}\frac{0}{x} = 0. \end{align*} $x=0$ での右微分係数と左微分係数とが一致するから, $f^{(n-1)}(x)$ は $x=0$ で微分可能であり, $f^{(n)}(0)=0$.

最終更新日:2011年11月02日

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