$n\geq 2$ を整数とする. このとき, $n$ は素数の積として表せる. しかも, その表し方は積の順序を除いて一意的である. このことを証明せよ.
解答例 1
まず, $n$ が素数の積として表せることを, $n$ に関する数学的帰納法によって証明する.
$n=2$のとき, $2$ は素数である.
$2\leq k\leq n$ であるようなすべての整数 $k$ について, $k$ が素数の積として表せると仮定する.
$n+1$ が素数ならば, これ以上すべきことはない.
$n+1$ が合成数ならば, 適当な正の整数 $l$, $m$ をとって, $$ n+1 = lm,\quad 2\leq l<n+1,\quad 2\leq m < n+1 $$ と書ける. 帰納法の仮定から, $l$, $m$ はそれぞれ素数の積で表せる. したがって, $n+1$ も素数の積で表せる.
以上より, すべての整数 $n\geq 2$ について, $n$ が素数の積として表せることが示された. 次に, 表し方の一意性を証明する. 上に述べたことから, 任意の整数 $n\geq 2$ に対して, ある正の整数 $k$ が存在して, $n$ は $k$ 個の素数の積で表すことができる. すなわち, $$ n = p_{1}p_{2}\cdots p_{k}. $$ そこで, $k$ に関する数学的帰納法によって, 表し方の一意性を証明する.
$k=1$ のとき, すなわち, $n=p_{1}$ のとき, $$ n = q_{1}q_{2}\cdots q_{l}, \quad \mbox{$q_{i}$ は素数} $$ と書けたとする. $l\geq 1$ であるが, いま, $l>1$ であると仮定する. $q_{l}$ は $p_{1}$ の約数であるが, $p_{1}$ は素数なので, $p_{1}=q_{l}$. ゆえに, 上式の両辺を $q_{l}$ で割ると, $$ 1 = q_{1}q_{2}\cdots q_{l-1}. $$ 右辺は $1$ より大きいから, 矛盾である. したがって, $l=1$, $p_{1}=q_{1}$ でなければならない.
一般の場合を証明するために, $n$ が $k-1$ 個以下の素数の積で書けるならば, 表し方は一意的であると仮定する. $$ n = p_{1}p_{2}\cdots p_{k} = q_{1}q_{2}\cdots q_{l}, \quad \mbox{$p_{i}$, $q_{j}$ は素数} $$ のとき, 帰納法の仮定から, $k\leq l$ である. $p_{k}\mid (q_{1}q_{2}\cdots q_{l})$ より, ある $i$ について, $p_{k}\mid q_{i}$. 積の順序を考えなければ, $p_{k}\mid q_{l}$ としてもよい. $q_{l}$ は素数だから, $p_{k} = q_{l}$. よって, $$ \frac{n}{p_{k}} = p_{1}\cdots p_{k-1}=q_{1}\cdots q_{l-1}. $$ 帰納法の仮定より, $l=k$ でなければならない. さらに, 番号を適当に付け替えることにより, $p_{i}=q_{i}$ となる. したがって, $n$ が $k$ 個の素数の積で書ける場合にも, その表し方の一意性が証明された.
以上より, すべての整数 $n\geq 2$ について, $n$ の素数の積での表し方は一意的である.
最終更新日:2011年11月02日