$R$ を環とし, $1_{R}$ を $R$ の単位元とする. このとき, 整数環 $\mathbb{Z}$ から $R$ への環準同型写像は $$ f: \mathbb{Z}\longrightarrow R,\quad n\longmapsto n\cdot 1_{R} $$ によって与えられるものしかないことを証明せよ.
解答例 1
写像 $f$ が環準同型写像であることの証明は省略する.
$g:\mathbb{Z}\rightarrow R$ を環準同型写像とする.
$0_{R}$ を $R$ の零元とすると, $g(0)=0_{R}$ である.
任意の正の整数 $n$ に対して $g(n)=n\cdot 1_{R}$ が成り立つことを, $n$ に関する数学的帰納法により証明する. まず, $n=1$ の場合, 環準同型写像の定義により, $g(1)=1_{R}$ である. 一般の場合, $g(n-1)=(n-1)\cdot 1_{R}$ を仮定すると, \begin{align*} g(n) &= g(n-1) + g(1) \\ &= (n-1)\cdot 1_{R} + 1_{R} \\ &= n\cdot 1_{R}. \end{align*} したがって, すべての正の整数に対して, $g(n)=n\cdot 1_{R}$ が成り立つ.
$n$ を負の整数とする. $m=-n$ とおくと, $m$ は正の整数だから, \begin{align*} g(n) &= g(-m) = -g(m) \\ &= -(m\cdot 1_{R}) = (-m)\cdot 1_{R} \\ &= n\cdot 1_{R}. \end{align*}
以上より, すべての $n\in\mathbb{R}$ に対して $g(n)=f(n)$ となり, $g=f$ がいえる.
最終更新日:2011年11月02日