$R$ を環, $\mathfrak{m}$ を $R$ の Jacobson 根基とする. $\mathfrak{m}$ は $R$ のすべての冪零な左イデアルを含むことを証明せよ.
解答例 1
以下, $R$ の零元を $0_{R}$ と書き, $M$ の零元を $0_{M}$ と書くことにする.
$I$ を $R$ の冪零な左イデアルとし, $M$ を単純左 $R$ 加群とする. このとき, ある整数 $n\geq 1$ が存在して, $I^{n}=\{0_{R}\}$ である. また, $$ IM = \left\{ \sum_{i=1}^{m}a_{i}x_{i} \Biggm| a_i\in I,\,x_i\in M,\,m=1,2,\ldots \right\} $$ は $M$ の部分左 $R$ 加群であるから, $IM=\{0_{M}\}$ または $IM=M$ である.
いま, $IM=M$ と仮定する. $x\in IM$ とすると, \begin{equation} x = \sum_{i=1}^{m_{1}}a_{i}^{(1)}x_{i}^{(1)}, \quad a_{i}^{(1)}\in I,\quad x_{i}^{(1)}\in M \tag{1} \end{equation} と表される. $IM=M$ と仮定したから, 各 $x_{i}^{(1)}$ も (1) と同じ形に表される. それらを (1) に代入すると, $x$ は \begin{equation} x = \sum_{i=1}^{m_{2}}a_{i}^{(2)}x_{i}^{(2)}, \quad a_{i}^{(2)}\in I^{2},\quad x_{i}^{(2)}\in M \tag{2} \end{equation} の形に表される. 再び $IM=M$ より, 各 $x_{i}^{(2)}$ も (1) と同じ形に表され, それらを (2) に代入すると, $x$ は $$ x = \sum_{i=1}^{m_{3}}a_{i}^{(3)}x_{i}^{(3)}, \quad a_{i}^{(3)}\in I^{3},\quad x_{i}^{(3)}\in M $$ の形に表される. 同様に繰り返すと, $$ x = \sum_{i=1}^{m_{n}}a_{i}^{(n)}x_{i}^{(n)}, \quad a_{i}^{(n)}\in I^{n},\quad x_{i}^{(n)}\in M $$ の形に表されることがいえる. ところが, $I^{n}=\{0_{R}\}$ であるから, $a_{i}^{(n)}=0_{R}$ ($i=1$, $2$, $\ldots$, $m_{n}$) となり, $x=0_{M}$. ゆえに, $IM=\{0_{M}\}$.
いずれにせよ, $IM=\{0_{M}\}$ であるから, $I\subseteq \mathrm{Ann}(M)$ となる. ここで, $\mathrm{Ann}(M)$ は $M$ の零化イデアルである. $M$ は任意だから, $$ I\subseteq \bigcap_{M}\mathrm{Ann}(M) = \mathfrak{m} $$ が成り立つ.
最終更新日:2011年11月02日