Keywords: Krull-東屋の補題, 中山の補題
$R$ を環とする. $M$ を有限生成 $R$ 加群とし, $N$ を $M$ の部分左 $R$ 加群とする. また, $\mathfrak{m}$ を $R$ の Jacobson 根基とする. このとき, $$ M=N+\mathfrak{m}M \Longrightarrow M=N $$ が成り立つことを証明せよ.
解答例 1
$M=N+\mathfrak{m}M$ かつ $M\neq N$ と仮定する. 後者の条件と $M$ が有限生成であることから, $M$ は $N$ を含むような極大左 $R$ 部分加群 $L_0$ をもつ. $L_0$ の極大性から, $M/L_0$ は単純 $R$ 加群になる. $\mathfrak{m}$ はすべての単純左 $R$ 加群の零化イデアルの共通部分であるから, $\mathfrak{m}\subseteq\mathrm{Ann}(M/L_0)$ となる. 一方, \begin{align*} a\in\mathrm{Ann}(M/L_0) & \Longleftrightarrow \mbox{任意の $x\in M$ に対して, $ax+L_0=L_0$} \\ & \Longleftrightarrow \mbox{任意の $x\in M$ に対して, $ax\in L_0$}. \end{align*} よって, $$ \mathfrak{m}M\subseteq\mathrm{Ann}(M/L_0)M\subseteq L_0. $$ ゆえに, $$ N+\mathfrak{m}M\subseteq N+L_0=L_0\subsetneq M. $$ これは $M=N+\mathfrak{m}M$ に反する. したがって, $M=N+\mathfrak{m}M$ ならば $M=N$ が成り立つ.
最終更新日:2011年11月02日