$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

環の定義を述べよ.

解答例 1

$R$ を空でない集合とし, 2つの写像 $\rho_1:R\times R\rightarrow R$, $\rho_2:R\times R\rightarrow R$ が定義されているものとする. 各 $x$, $y\in R$ に対して, $\rho_1(x, y)$ を $x+y$ と書き, $\rho_2(x, y)$ を $xy$ と書くことにする.

以下の条件が成り立つとき, $R$ を環という. またそのとき, $\rho_1$ を $R$ における加法といい, $\rho_2$ を $R$ における乗法という. さらに, $x+y$ を $x$, $y$ の和といい, $xy$ を $x$, $y$ の積という.

I. 加法に関する条件:

(I-a) 任意の $x$, $y$, $z\in R$ に対して, $$ (x + y) + z = x + (y + z). $$ この条件を, 加法に関する結合法則という.

(I-b) 任意の $x$, $y\in R$ に対して, $$ x + y = y + x. $$ この条件を, 加法に関する交換法則という.

(I-c) ある $o\in R$ が存在して, 任意の $x\in R$ に対して, $$ o + x = x + o = x. $$ $o$ を $R$ の零元という. $o$ は $0$ と書かれることが多い.

(I-d) 任意の $x\in R$ に対して, ある $y\in R$ が存在して, $$ y + x = x + y = o. $$ $y$ を加法に関する $x$ の逆元といい, $-x$ と書く.

条件 (I-a) ~ (I-d) は, $R$ が加法群をなすことを意味する.

II. 乗法に関する条件:

(II-a) 任意の $x$, $y$, $z\in R$ に対して, $$ (xy)z = x(yz). $$ この条件を, 乗法に関する結合法則という.

(II-b) ある元 $e\in R$ が存在して, 任意の $x\in R$ に対して, $$ ex = xe = x. $$ $e$ を $R$ の単位元という. $e$ は $1$ と書かれることが多い.

III. 加法と乗法に関する条件: 任意の $x$, $y$, $z\in R$ に対して, \begin{align*} x(y+z) = xy+xz, \\ (x+y)z = xz+yz. \end{align*} この条件を分配法則という.

なお, 環の定義は, 文献によって, 単位元の存在を仮定する場合とそうでない場合とがある. 単位元をもつ環は, そうでない環と区別するために, 単位的環と呼ばれることがある.

$R$ を環とする. $x$, $y\in R$ について, $xy = yx$ が成り立つとき, $x$ と $y$ とは $R$ の乗法について可換であるという. さらに, 任意の $x$, $y\in R$ に対して $xy=yx$ が成り立つとき, $R$ を可換環という.

最終更新日:2011年11月02日

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