$p$ を素数, $m$, $e$ を正の整数とするとき, \begin{equation} \binom{p^{e}m}{p^{e}}\equiv m\pmod{p} \tag{$*$} \end{equation} が成り立つことを証明せよ.
解答例 1
$e$ に関する数学的帰納法により証明する.
$e=1$ のとき, \begin{align*} \binom{pm}{p} &= \frac{pm(pm-1)(pm-2)\cdots(pm-p+1)}{p!} \\ &= \frac{m(pm-1)(pm-2)\cdots(pm-p+1)}{(p-1)!} \\ &\equiv m\cdot\frac{(p-1)(p-2)\cdots 1}{(p-1)!} \\ &= m \pmod{p}. \end{align*} よって, $e=1$ のとき ($*$) は成り立つ.
$e>1$ とし, $e-1$ のとき ($*$) が成り立つと仮定する. そのとき, \begin{align*} \binom{p^{e}m}{p^{e}} &= \frac{p^{e}m(p^{e}m-1)(p^{e}m-2)\cdots(p^{e}m-p^{e}+1)}{p^{e}!} \\ &= \prod_{k=0}^{p^{e-1}-1} \frac{(p^{e}m-kp)(p^{e}m-kp-1)\cdots (p^{e}m-(k+1)p+1)}{(p^{e}-kp)(p^{e}-kp-1)\cdots (p^{e}-(k+1)p+1)} \\ &= \prod_{k=0}^{p^{e-1}-1}\frac{p^{e}m-kp}{p^{e}-kp} \cdot\prod_{k=0}^{p^{e-1}-1}\frac{(p^{e}m-kp-1)\cdots (p^{e}m-(k+1)p+1)}{(p^{e}-kp-1)\cdots (p^{e}-(k+1)p+1)}. \end{align*} 帰納法の仮定を用いると, \begin{align*} \prod_{k=0}^{p^{e-1}-1}\frac{p^{e}m-kp}{p^{e}-kp} &= \prod_{k=0}^{p^{e-1}-1}\frac{p^{e-1}m-k}{p^{e-1}-k} \\ &= \binom{p^{e-1}m}{p^{e-1}} \equiv m\pmod{p}. \end{align*} 一方, \begin{align*} &\prod_{k=0}^{p^{e-1}-1}\frac{(p^{e}m-kp-1)\cdots (p^{e}m-(k+1)p+1)}{(p^{e}-kp-1)\cdots (p^{e}-(k+1)p+1)} \\ &\qquad\equiv \prod_{k=0}^{p^{e-1}-1}\frac{(p-1)!}{(p-1)!} = 1\pmod{p}. \end{align*} ゆえに, $e$ のときも ($*$) は成り立つ.
したがって, すべての正の整数 $e$ に対して ($*$) の成り立つことが証明された.
解答例 2
$p$ を素数とし, $\mathbb{F}_p$ を $p$ 個の元からなる有限体とする. 多項式環 $\mathbb{F}_p[X]$ において, \begin{align*} (1+X)^{p^em} &= \bigl( (1+X)^{p^e} \bigr)^m \\ &= (1+X^{p^e})^m = \sum_{r=0}^m\binom{m}{r}X^{p^er} \\ &= 1+mX^{p^e} + \cdots + X^{p^em}. \end{align*} 一方, $$ (1+X)^{p^em} = \sum_{r=0}^{p^em}\binom{p^em}{r}X^r. $$ ゆえに, $$ \sum_{r=0}^{p^em}\binom{p^em}{r}X^r = 1+mX^{p^e} + \cdots + X^{p^em}. $$ $X^{p^e}$ の項を比較すると, ($*$) が得られる.
解答例 3
$M=\mathbb{Z}/p^{e}\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$ とおく. さらに, $$ \mathcal{M} = \{ S\subseteq M \mid \lvert S\rvert = p^{e} \} $$ とおく. $\lvert M\rvert=p^{e}m$ だから, \begin{equation} \lvert\mathcal{M}\rvert = \binom{p^{e}m}{p^{e}} \tag{1} \end{equation} である.
$G=\mathbb{Z}/p^{e}\mathbb{Z}$ とおく. $G$ は加法群である. 写像 $$ G\times M \longrightarrow M,\quad (g, (a, b)) \longmapsto (g+a, b) $$ によって, $G$ は $M$ に作用する. さらに, $g\in G$, $S\in\mathcal{M}$ に対し, $$ gS = \{ (g+a, b) \mid (a, b)\in S \} $$ だから, $\lvert gS\rvert = \lvert S\rvert$. したがって, $gS\in\mathcal{M}$ となる. こうして, 写像 $$ G\times\mathcal{M}\longrightarrow\mathcal{M},\quad (g, S)\longmapsto gS $$ が定まり, この写像によって $G$ は $\mathcal{M}$ に作用する. $G$ は $p$ 群であり, $\mathcal{M}$ は有限集合だから, \begin{equation} \lvert\mathcal{M}\rvert\equiv\lvert\mathcal{M}^G\rvert \pmod{p} \tag{2} \end{equation} が成り立つ. ここで, $\mathcal{M}^G$ は $G$ の固定点の全体からなる集合である. また, \begin{equation} \begin{split} S\in \mathcal{M}^G &\Longleftrightarrow \mbox{すべての $g\in G$ に対して, $gS=S$} \\ &\Longleftrightarrow \mbox{ある $b\in\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$ が存在して, $S=\mathbb{Z}/p^{e}\mathbb{Z}\times\{b\}$} \end{split} \tag{3} \end{equation} が成り立つ. 実際, 1番目の $\Longleftrightarrow$ は $S\in\mathcal{M}^{G}$ であることの定義である. 2番目の $\Longrightarrow$ について, 仮定より, $(a, b)\in S$ を1つとったとき, $$ (a+g, b)\in gS = S\quad (\forall g\in \mathbb{Z}/p^{e}\mathbb{Z}) $$ となる. $\mathbb{Z}/p^{e}\mathbb{Z} = \{ a+g\mid g\in \mathbb{Z}/p^{e}\mathbb{Z} \}$ であるから, $$ \mathbb{Z}/p^{e}\mathbb{Z}\times\{b\}\subseteq S. $$ ところが, $$ \lvert \mathbb{Z}/p^{e}\mathbb{Z}\times\{b\}\rvert = \lvert S\rvert=p^{e} $$ であるから, $\mathbb{Z}/p^{e}\mathbb{Z}\times\{b\}=S$ となる. 2番目の $\Longleftarrow$ について, 任意の $g\in G$ に対して, 仮定より, $gS\subseteq S$ となる. $\lvert gS\rvert = \lvert S\rvert$ であったから, $gS=S$. 以上で (3) が示された. ゆえに, \begin{equation} \lvert\mathcal{M}^G\rvert = \lvert\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\rvert = m. \tag{4} \end{equation} (1), (2), (4) を合わせると, ($*$) が得られる.
最終更新日:2011年11月02日