Keywords: Heine-Borel の定理, ハイネ・ボレルの定理
$\mathbb{R}$ の任意の閉区間はコンパクトであることを証明せよ.
解答例 1
$[a, b]$ を閉区間とし, $\mathfrak{G}$ を $[a, b]$ の開被覆とする.
いま, $[a, b]$ の元 $y$ のうち, 閉区間 $[a, y]$ が $\mathfrak{G}$ に属する有限個の開集合で被覆されているようなものの全体を $A$ とする. 証明すべきことは $b\in A$ となることである.
まず, $a\in A$ であるから, $A\neq\emptyset$. また, 任意の $y\in A$ に対して $y\leq b$ となるから, $A$ は上に有界である. したがって, $A$ の上限 $\sup A$ が存在する (実数の連続性).
$b'=\sup A$ とおく. このとき, 任意の $\varepsilon>0$ に対して, ある $y_{\varepsilon}\in A$ が存在して, \begin{equation} b'-\varepsilon < y_{\varepsilon} \leq b' \tag{1} \end{equation} となる. 一方, $a\leq b'\leq b$, すなわち, $b'\in [a, b]$ であるから, ある $O\in\mathfrak{G}$ が存在して, $b'\in O$ となる. $O$ は $\mathbb{R}$ の開集合だから, ある実数 $\delta>0$ が存在して, $$ (b'-\delta, b'+\delta)\subseteq O. $$ このとき, $\varepsilon=\delta$ としたときに (1) をみたす $A$ の元 $y_{\varepsilon}$ を $y_{\delta}$ とすると, $$ [a, b'] = [a, y_{\delta}]\cup [y_{\delta}, b'] \subseteq [a, y_{\delta}]\cup O $$ であり, $[a, y_{\delta}]$ は $\mathfrak{G}$ の有限個の開集合で被覆されるから, $[a, b']$ も $\mathfrak{G}$ の有限個の開集合で被覆される. よって, $b'\in A$ である.
もし仮に $b'<b$ であったとすると, $$ y_1=\min\left\{\frac{b+b'}{2}, b' + \frac{\delta}{2} \right\} $$ とおくとき, $b'<y_1<b$ かつ $b'<y_1<b'+\delta$ となる. 前者より $y_1\in [a, b]$ である. また, 後者より $$ [a, y_1] = [a, y_{\delta}]\cup [y_{\delta}, y_1] \subseteq [a, y_{\delta}]\cup O $$ であるから, $[a, b']$ のときと同様の議論により, $[a, y_1]$ は $\mathfrak{G}$ の有限個の開集合で被覆される. よって, $y_1\in A$ となるが, これは $b'$ を $A$ の上限としたことに反する. したがって, $b'=b$ でなければならない. $b'\in A$ であったから, $b\in A$ である.
解答例 2
$[a, b]$ を閉区間とし, $\mathfrak{G}$ を $[a, b]$ の開被覆とする.
$\mathfrak{G}$ が有限な部分被覆をもたないものと仮定する. そのとき, 閉区間 $$ \left[a, \frac{a+b}{2}\right],\quad \left[\frac{a+b}{2}, b\right] $$ のうち少なくとも一方は $\mathfrak{G}$ に属する有限個の開集合によって被覆できない. その閉区間を $[a_1, b_1]$ とする. 同様に, 閉区間 $$ \left[a_1, \frac{a_1+b_1}{2}\right],\quad \left[\frac{a_1+b_1}{2}, b_1\right] $$ の中の少なくとも一方は $\mathfrak{G}$ に属する有限個の開集合によって被覆できない. 以下同様にして, $\mathfrak{G}$ に属する有限個の開集合によって被覆できない閉区間 $[a_n, b_n]$ を2等分して, $\mathfrak{G}$ に属する有限個の開集合によって被覆できない閉区間 $[a_{n+1}, b_{n+1}]$ を作ることができる. もし, $[a_n, b_n]$ を2等分した閉区間の両方が $\mathfrak{G}$ に属する有限個の開集合によって被覆できないときには, 常に $a_n$ を含む閉区間を $[a_{n+1}, b_{n+1}]$ にすると決めておく. そうすれば, このような操作を続けることによって, 閉区間の列 $$ [a, b]\supseteq [a_1, b_1]\supseteq \cdots \supseteq [a_n, b_n]\supseteq [a_{n+1}, b_{n+1}]\supseteq \cdots $$ を一つ定めることができる. 閉区間の列の作り方から, $$ b_n-a_n = \frac{1}{2^n}(b-a) \to 0\quad (n\to\infty). $$ ゆえに, Cantor の区間縮小法の原理によって, すべての閉区間 $[a_n, b_n]$ に共通に含まれる実数 $c$ がただ1つ存在して, $$ c = \lim_{n\to\infty}a_n = \lim_{n\to\infty}b_n $$ が成り立つ.
さて, $\mathfrak{G}$ は閉区間 $[a, b]$ の開被覆であるから, $\mathfrak{G}$ に属する開集合 $O$ で $c\in O$ となるものが存在する. このとき, ある実数 $\varepsilon>0$ が存在して, \begin{equation} (c-\varepsilon, c+\varepsilon)\subseteq O \tag{1} \end{equation} となる. $\displaystyle\lim_{n\to\infty}{a_n}=c$ より, ある番号 $N_1$ が存在して, $n\geq N_1$ を満たす全ての番号 $n$ に対して, $$ 0\leq c-a_n<\varepsilon. $$ 同様に, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}{b_n}=c$ より, ある番号 $N_2$ が存在して, $n\geq N_2$ を満たす全ての番号 $n$ に対して, $$ 0\leq b_n-c<\varepsilon. $$ ゆえに, $N=\max\{N_1, N_2\}$ とおくと, $$ c-\varepsilon < a_N \leq b_N < c+\varepsilon $$ が成り立つ. すなわち, \begin{equation} [a_N, b_N] \subseteq (c-\varepsilon, c+\varepsilon). \tag{2} \end{equation} (1), (2) より, $[a_N, b_N]$ は $\mathfrak{G}$ に属するただ1つの開集合 $O$ により被覆されることになり, $[a_N, b_N]$ の作り方に矛盾する.
最終更新日:2011年11月02日