フェルマの最終定理について
フェルマの最終定理とは、「nを2より大きな自然数とするとき、
an + bn = cn
なる整数の組 a, b, c が存在するならば
abc = 0
でなければならない」という命題のことである。
フェルマの最終定理が偽であると仮定すると、2より大きなある自然数nについて、 方程式 xn + yn = zn には少なくとも一組の整数解 (x, y, z) = (a, b, c) で、a, b, c がいずれも0ではなく、 しかも二つずつ互いに素であるものが存在する。 そのような解から、ある「特殊な」性質をもつ楕円曲線を作ることができる。 それはフライの楕円曲線と呼ばれており、
y2 = x (x - an) (x + bn)
なる方程式で与えられる。このような楕円曲線を考えたフライは、1983年に次の予想を発表した。
「フライの楕円曲線はモジュラーではない」
この予想をリベットが1986年に証明した。
フライの楕円曲線が存在しないことがいえればフェルマの最終定理は正しい。 したがってフェルマの最終定理を証明するためには
「すべての楕円曲線はモジュラーである」
ことを示せば十分である。この命題は志村=谷山予想と呼ばれている。 厳密には、フェルマの最終定理を証明するためにはこの予想の一部分を証明するだけでよい。
ワイルズは1995年に発表した論文において、「半安定(semi-stable)」と呼ばれる性質をもつ楕円曲線について志村=谷山予想を証明した。 一方、フライの楕円曲線は半安定である。よってワイルズの結果からフライの楕円曲線は存在しえないことが導かれる。 こうしてフェルマの最終定理は完全に証明された。
(注1) 楕円曲線とは、x, y を未知数とする方程式
y2 = x3 + ax2 + bx + c (a, b, c は有理数)
で与えられる曲線で、右辺が x の多項式として重根をもたないものをいう。
(注2) 一般に曲線がモジュラーであるとは、大雑把にいえば、 その曲線が保型関数と呼ばれる「よい」関数を用いて表示できることを意味する。
関連書籍
サイモン・シン(著) 青木薫(訳): フェルマーの最終定理,新潮社,2000
足立恒雄(著): フェルマーの大定理が解けた!,講談社,1995
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