$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

多元環の定義を述べよ.

解答例 1

$R$, $A$ を環とする.

$R$ の $A$ へのスカラー倍 $$ R\times A\longrightarrow A,\quad (r, x)\longmapsto rx $$ が定まり, そのスカラー倍と $A$ における加法とに関して $A$ は 左 $R$ 加群になるとする. さらに, そのスカラー倍と $A$ における乗法との間に可換性が成り立つとする. すなわち, 任意の $a\in R$, $x$, $y\in A$ に対して, $$ (ax)y = x(ay) = a(xy) $$ が成り立つとする. このとき, $A$ を $R$ 上の左多元環という.

$R$ の $A$ へのスカラー倍 $$ R\times A\longrightarrow A,\quad (r, x)\longmapsto xr $$ が定まり, そのスカラー倍と $A$ における加法とに関して $A$ は 右 $R$ 加群になるとする. さらに, そのスカラー倍と $A$ における乗法との間に可換性が成り立つとする. すなわち, 任意の $a\in R$, $x$, $y\in A$ に対して, $$ (xa)y = x(ya) = (xy)a $$ が成り立つとする. このとき, $A$ を $R$ 上の右多元環という.

$R$ が可換環のとき, 左多元環と右多元環とは, 記法の違いを除いて実質的には同じものなので, それらを単に $R$ 上の多元環という.

多元環のことを代数ともいう.

環 $R$ 上の左多元環 $A$ が斜体であるとき, $A$ を $R$ 上の左多元体という. 環上の右多元体や, 可換環上の多元体も同様に定義される.

最終更新日:2011年11月02日

©2003-2011 よしいず