$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

環上の自由加群の定義を述べよ.

解答例 1

$R$ を環, $M$ を左 $R$ 加群とする.

$x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}\in M$ の $R$ 上の $1$ 次結合とは, $$ a_{1}x_{1}+a_{2}x_{2}+\cdots+a_{n}x_{n}\quad (a_{i}\in R) $$ なる形の元のことをいう. $1$ 次結合のことを線形結合ともいう.

$x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}\in M$ の $R$ 上の $1$ 次関係とは, $$ a_{1}x_{1}+a_{2}x_{2}+\cdots+a_{n}x_{n}=0 \quad (a_{i}\in R) $$ なる形の関係式のことをいう. $1$ 次関係のことを線形関係ともいう.

$x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}\in M$ とする. 任意の $a_{1}$, $a_{2}$, $\ldots$, $a_{n}\in R$ に対して, $$ a_{1}x_{1}+a_{2}x_{2}+\cdots+a_{n}x_{n} = 0 \Longrightarrow a_{1}=a_{2}=\cdots=a_{n}=0 $$ が成り立つとき, $x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}$ は $R$ 上 $1$ 次独立であるという. また, $1$ 次独立でないとき, すなわち, ある $a_{1}$, $a_{2}$, $\ldots$, $a_{n}\in R$ が存在して, $$ a_{1}x_{1}+a_{2}x_{2}+\cdots+a_{n}x_{n} = 0, \quad (a_{1}, a_{2}, \ldots, a_{n})\neq (0, 0, \ldots, 0) $$ が成り立つとき, $x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}$ は $R$ 上 $1$ 次従属であるという. $1$ 次独立のことを線形独立ともいい, $1$ 次従属のことを線形従属ともいう.

$x$ を $V$ の元とする. $x$ が $K$ 上 $1$ 次独立であるとき, すなわち, 任意の $a\in R$ に対して, $$ ax=0 \Longrightarrow a=0 $$ が成り立つとき, $x$ を自由元という. それに対し, $x$ が自由でないとき, 言い換えると, $x$ が $K$ 上 $1$ 次従属であるとき, すなわち, ある $a\in R$ が存在して, $$ ax = 0,\quad a\neq 0 $$ が成り立つとき, $x$ をねじれ元あるいは束縛元という.

$M$ が $x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}\in M$ によって $R$ 上生成されるとは, $M$ のすべての元が $x_{1}$, $x_{2}$, $\ldots$, $x_{n}$ の $R$ 上の $1$ 次結合で表されるときにいう.

$b_{1}$, $b_{2}$, $\ldots$, $b_{n}\in M$ が $M$ の $R$ 上の基底であるとは, 次の2つの条件が成り立つときにいう.

(B1) $b_{1}$, $b_{2}$, $\ldots$, $b_{n}$ は $R$ 上 $1$ 次独立である.

(B2) $b_{1}$, $b_{2}$, $\ldots$, $b_{n}$ によって $M$ は $R$ 上生成される.

$S$ を $M$ の部分集合とする. $S$ の任意の相異なる有限個の元が $R$ 上 $1$ 次独立であるとき, $S$ は $R$ 上 $1$ 次独立であるという. 空集合も $1$ 次独立な集合とする. また, $M$ のすべての元が $S$ の有限個の元の $1$ 次結合によって表されるとき, すなわち, $$ M = \left\{ \sum_{i=1}^{n}a_{i}x_{i} \Biggm| a_i\in R,\,x_i\in S,\,n=1,2,\ldots \right\} $$ が成り立つとき, $M$ は $S$ によって $R$ 上生成されるといい, $S$ を $M$ の $R$ 上の生成系という.

$M$ の生成系として有限集合がとれるとき, $M$ は有限生成であるという.

$B$ を $M$ の空でない部分集合とする. $B$ が $R$ 上 $1$ 次独立であり, かつ $M$ が $S$ によって $R$ 上生成されるとき, $B$ を $M$ の $R$ 上の基底という. また, そのような $B$ が存在するとき, $M$ を自由 $R$ 加群あるいは $R$ 上の自由加群という.

$R$ を環とし, $M$ を有限生成な自由 $R$ 加群とする. $M$ の基底に含まれる元の個数が一定であるとき, それを $M$ の階数といい, $\mathop{\mathrm{rank}}{M}$ で表す.

最終更新日:2011年11月02日

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