$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

$R$ を環とする. $R$ が左 $R$ 加群として直和分解されるための必要十分条件は, ある $e_{1}$, $e_{2}$, $\ldots$, $e_{n}\in R$ が存在して, \begin{equation} 1=\sum_{i=1}^{n}e_i\tag{$*$} \end{equation} と表され, 各 $i$, $j$ に対して, \begin{equation} e_{i}e_{j} = \begin{cases} e_{i}^{2}, & \mbox{$i=j$ のとき} \\ 0, & \mbox{$i\neq j$ のとき} \end{cases} \tag{$*$$*$} \end{equation} が成り立つことである. また, この条件が成り立つとき, $$ R = \bigoplus_{i=1}^{n}Re_{i} $$ となる. このことを証明せよ.

解答例 1

$R$ の部分左 $R$ 加群 $P_{1}$, $P_{2}$, $\ldots$, $P_{n}$ が存在して, $$ R = \bigoplus_{i=1}^{n}P_{i} $$ と直和分解されたとする. $R$ の単位元 $1$ は, $$ 1 = \sum_{i=1}^{n}e_i,\quad e_{i}\in P_{i} $$ と一意的に表される. このとき, 各 $i$ に対して, $$ e_{i} = e_{i}\cdot 1 = \sum_{j=1}^{n}e_{i}e_{j},\quad e_{i}e_{j}\in P_{i} $$ となる. 直和分解における和の表し方の一意性から, ($*$$*$) が得られる.

逆に, ある $e_{1}$, $e_{2}$, $\ldots$, $e_{n}\in R$ が存在して, ($*$) および ($*$$*$) が成り立つと仮定する. ($*$) より, $$ R = \sum_{i=1}^{n}Re_{i}. $$ これが直和分解であることをいうためには, 各 $i=1$, $2$, $\ldots$, $n$ に対して, \begin{equation} Re_{i}\cap\left(\sum_{j\neq i}Re_{j}\right)=\{0\} \tag{1} \end{equation} であることを示せばよい. $x_{i}\in Re_{i}$ ($i=1$, $2$, $\ldots$, $n$) とし, $\displaystyle\sum_{i=1}^{n}x_{i}=0$ であるとする. 各 $i$ に対して, ($*$$*$) より, $$ 0 = \left(\sum_{j=1}^{n}x_{j}e_{j}\right)e_{i} = x_{i}e_{i}. $$ 一方, $x_{i}\in Re_{i}$ より, ある $r_{i}\in R$ が存在して, $x_{i}=r_{i}e_{i}$. このとき, $$ x_{i}e_{i} = r_{i}e_{i}^{2} = r_{i}e_{i} = x_{i}. $$ ゆえに, $x_{i}=0$. したがって, 各 $i=1$, $2$, $\ldots$, $n$ に対して, (1) がいえる.

最終更新日:2011年11月02日

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