$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

$R$ を環, $\mathfrak{m}$ を $R$ の Jacobson 根基とする. $\mathfrak{m}$ は, すべての単純左 $R$ 加群 $M$ の零化イデアル $\mathrm{Ann}(M)$ の共通部分と一致する. すなわち, $$ \mathfrak{m} = \bigcap_{M}\mathrm{Ann}(M). $$ また, $\mathfrak{m}$ は $R$ の両側イデアルである. このことを証明せよ.

解答例 1

$M$ を単純 $R$ 加群とする. 任意の $x\in M$, $x\neq 0$ に対して, $R$ 準同型写像 $$ \varphi_{x}: R\longrightarrow M,\quad r\longmapsto rx $$ が定まる. $M$ は単純だから, $M=Rx=\varphi_{x}(R)$. よって, $\varphi_x$ は全射である. $\ker{\varphi_{x}}=\mathrm{Ann}(x)$ であるから, 準同型定理によって, $$ M\cong R/\mathrm{Ann}(x). $$ $M$ は単純だから, $\mathrm{Ann}(x)$ は $R$ の極大左イデアルである. ゆえに, $\mathfrak{m}\subseteq\mathrm{Ann}(x)$. また, $$ \mathfrak{m}\subseteq R = \mathrm{Ann}(0). $$ したがって, $$ \mathfrak{m}\subseteq\bigcap_{x\in M}\mathrm{Ann}(x) = \mathrm{Ann}(M). $$ $M$ は任意だから, $$ \mathfrak{m}\subseteq\bigcap_{M}\mathrm{Ann}(M) $$ となる.

逆に, $R$ の任意の極大左イデアル $L$ に対して, $R/L$ は単純 $R$ 加群であるから, \begin{equation} \bigcap_{M}\mathrm{Ann}(M) \subseteq \mathrm{Ann}(R/L). \tag{1} \end{equation} また, $R$ が単位元 $1$ をもつことを用いると, \begin{align*} a\in \mathrm{Ann}(R/L) &\Longrightarrow \mbox{任意の $r\in R$ に対して, $ar+L = L$} \\ &\Longrightarrow \mbox{任意の $r\in R$ に対して, $ar\in L$} \\ &\Longrightarrow a = a\cdot 1\in L. \end{align*} ゆえに, \begin{equation} \mathrm{Ann}(R/L)\subseteq L. \tag{2} \end{equation} (1), (2) より, $$ \bigcap_{M}\mathrm{Ann}(M)\subseteq L. $$ $\mathfrak{m}$ は $R$ のすべての極大左イデアルの共通部分だから, $$ \bigcap_{M}\mathrm{Ann}(M)\subseteq \mathfrak{m} $$ となり, 逆の包含関係もいえる.

最後に, 各 $M$ に対して $\mathrm{Ann}(M)$ は $R$ の両側イデアルだから, その共通部分も両側イデアルである.

最終更新日:2011年11月02日

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