$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

$m\geq 2$ を整数とするとき, 剰余環 $\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$ は単項イデアル環であることを証明せよ.

解答例 1

$a\in\mathbb{Z}$ を代表元とする法 $m$ に関する剰余類を $[a]$ で表す. すなわち, $[a] = a + m\mathbb{Z}$.

$I$ を $\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$ のイデアルとする. $I$ が零イデアルならば, $I$ は $[0]$ によって生成される単項イデアルである.

以下, $I$ は零イデアルでないと仮定する. $I$ は $[0]$ でない元を含む. そのとき, 代表元 $1$, $2$, $\ldots$, $m-1$ の中で $[b]\in I$ となる最小の $b$ が存在する. $I$ の元 $X$ を任意にとると, ある $a\in\mathbb{Z}$ が存在して, $X=[a]$. さらに, ある $q$, $r\in\mathbb{Z}$ が存在して, $$ a = bq + r,\quad 0\leq r<b. $$ $I$ はイデアルだから, $$ [r] = [a-bq] = [a] + [b][-q] \in I. $$ もし $r\neq 0$ なら $b$ の最小性に反するから, $r=0$ でなければならない. よって, $$ X = [a] = [b][-q] \in [b]\cdot\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}. $$ ゆえに, $I\subseteq [b]\cdot\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$. 逆の包含関係は明らかだから, $I=[b]\cdot\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$. すなわち, $I$ は単項イデアルである.

解答例 2

$a\in\mathbb{Z}$ を代表元とする法 $m$ に関する剰余類を $[a]$ で表す. すなわち, $[a] = a + m\mathbb{Z}$.

$\pi:\mathbb{Z}\rightarrow\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$, $x\mapsto [x]$ を標準的な全射とする. $\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$ のイデアルと $m\mathbb{Z}$ を含む $\mathbb{Z}$ のイデアルとは $\pi$ によって1対1に対応している.

$\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$ のイデアル $I$ は, $m\mathbb{Z}$ を含む $\mathbb{Z}$ のあるイデアル $J$ によって, $$ I = f(J) = \{ [x] \mid x\in J \} $$ と書ける. また, $J$ は $m$ のある約数 $d$ によって $J=d\mathbb{Z}$ と表せる. よって, \begin{align*} I &= \{ [x] \mid x\in d\mathbb{Z} \} = \{ [dy] \mid y\in \mathbb{Z} \} \\ &= \{ [d][y] \mid y\in \mathbb{Z} \} = [d]\cdot\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}. \end{align*} すなわち, $I$ は単項イデアルである.

最終更新日:2011年11月02日

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