$$ \newcommand\bm[1]{\boldsymbol{#1}} \renewcommand\limsup{\varlimsup} \renewcommand\liminf{\varliminf} $$

体上の有限次元多元環の元は零因子か単元であることを証明せよ.

解答例 1

$K$ を体とし, $A$ を $K$ 上の有限次元多元環とする.

$A$ の零因子でない元 $a$ が単元であることを示す. 写像 $$ f_{a}: A\longrightarrow A,\quad x\longmapsto ax $$ は $K$ 線形である. 実際, 任意の $x$, $y\in A$ に対して, $$ f_{a}(x+y) = a(x+y) = ax+ay = f_{a}(x)+f_{a}(y). $$ また, 多元環における乗法とスカラー倍との可換性から, 任意の $x\in A$ と $c\in K$ に対して, $$ f_{a}(cx) = a(cx) = c(ax) = c\cdot f_{a}(x). $$ さて, $a$ は零因子でないから, 任意の $x\in A$ に対して, $$ f_{a}(x) = 0 \Longrightarrow ax=0 \Longrightarrow x=0. $$ ゆえに, $f_{a}$ は単射であり, $\dim_{K}{\ker(f_{a})} = 0$. さらに, $[A: K]<\infty$ だから, 次元定理により, $$ \dim_K{A} = \dim_{K}{\ker(f_{a})} + \dim_{K}{f_{a}(A)} = \dim_{K}{f_{a}(A)}. $$ $f_{a}(A)$ は $A$ の部分ベクトル空間だから, $f_{a}(A) = A$. すなわち, $f_{a}$ は全射である. 特に, ある $b\in R$ が存在して, $$ 1 = f_{a}(b) = ab. $$ さらに, $b$ に対して写像 $f_{b}$ を考えれば, ある $c\in R$ が存在して, $$ 1 = f_{b}(c) = bc. $$ このとき, $$ ba = ba(bc) = b(ab)c = bc = 1. $$ したがって, $ab=ba=1$ となり, $a$ は $R$ の単元である.

最終更新日:2011年11月02日

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